【借金問題】ギャンブルで借金した場合の自己破産

競馬やパチンコなどギャンブルで作った借金は、自己破産でゼロにできないという話を聞いたことがある人もいるでしょう。
まったくの間違いとは言えませんが、正しくもありません。
きちんと自己破産すれば、多くの場合で借金をゼロにすることができます。

1 ギャンブルで作った借金はどう扱われる?

自己破産の申立てをする目的は、最終的に借金の返済義務を免除してもらうことにあります。
これを「免責」と言います。
未払いの税金などについては裁判所の免責許可決定があっても免責されませんが、金融機関からの通常の借金は裁判所の免責許可決定によって免責され、返済義務がなくなります。

しかし、法律には、このような場合には免責を許可しないという事由(免責不許可事由)が、いくつか定められています。
そして、この免責不許可事由の一つに、浪費や射幸行為によって著しく財産を減少させ、又は過大な借金をしたこと、というのがあります。
競馬やパチンコなどのギャンブルは、ここでいう射幸行為にあたります。
ただ、著しく財産を減少させたり過大な借金を作ったりした場合ですので、ギャンブルで作った借金が小さいような場合は、この免責不許可事由に該当しないと言えます。

他方、ギャンブルが借金の大部分であるような場合は、この免責不許可事由に該当すると考えられます。
したがって、原則としては、免責が許可されないことになります。

しかし、ここであきらめてしまってはいけません。
免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所は裁量で免責許可決定できるという規定が、法律に設けられています。

大切なことは、裁判所に免責を許可してもよいという裁量を働かせてもらうことです。
では、そのためにはどうすればよいのでしょうか。

自己破産は、返しきれない借金を背負ってしまった債務者が、経済的に再スタートを切るための制度です。
ですから、裁判所が、債権者に迷惑をかけてでも、この人には再スタートを切らせてあげようという考えになれば、裁量で免責が許可される可能性がでてきます。

そのために、ギャンブルからきっぱりと足を洗うのは当然です。
その上で、ギャンブルで借金を重ねた過去を見つめなおして反省し、将来の生活設計をきちんと持つことができれば、やり直したいという意欲を裁判所に汲み取ってもらうことができるでしょう。

2 裁量免責はどのようにして判断される?

ギャンブルなどの免責不許可事由があって、裁判所に裁量で免責するかどうか判断が必要な場合、破産手続が開始されると、裁判所が選任する破産管財人が付けられることになります。
破産管財人は、破産者がギャンブルに手を出していないか、再スタートへ向けた生活をしているか、などを数か月にわたって調査します。
破産者への郵便物はすべて破産管財人へ回送されますし、預金通帳も確認しますので、破産管財人との面談でウソをついてもバレてしまいます。

何かよくないことがあっても、正直に話したうえで反省すればなんとかなる可能性がありますが、破産管財人にウソをつくと、それが新たな免責不許可事由になってしまいます。
破産管財人は、このような調査を踏まえて、免責に関する意見を裁判所へ提出します。

裁判所は、この意見に基づいて免責許可するかどうかを判断することになります。

3 裁量免責が認められない典型的な例

裁量免責が認められないのはどういう場合でしょうか。

典型例の一つ目は、破産手続きが始まってからもギャンブルをやめていなかった場合です。
それでも、1回だけ競馬場に行ったが破産管財人に正直に話して反省文を書いたというのなら、まだ可能性はゼロと言えません。
しかし、ギャンブルをやめていないのにやめたとウソをついていたのがバレたというのでは、裁量免責はなかなか難しくなるでしょう。

典型例の二つ目は、ギャンブルで二回目の破産という場合です。
一度免責許可されてから7年以内にもう一度自己破産をすると、そのことが免責不許可事由になります。
それでも裁量免責の可能性はありますが、前回もギャンブルでの破産であったとすると、生活態度を改めるのは難しいと判断するのが通常であり、裁量免責を得るのはきわめて困難と考えるべきでしょう。
7年以上が経過してからの自己破産申立てであっても、前回も今回もギャンブルが借金の理由なのであれば、容易に裁量免責を得られると考えるべきではないでしょう。