【離婚・男女トラブル】不倫相手に対する慰謝料請求

夫婦の一方に不貞行為があった場合、他方の配偶者から不貞相手に対して慰謝料請求が可能です。
では、不貞行為を行った配偶者にも、その不貞行為の相手方にも、同じように慰謝料請求ができるのでしょうか。

1 基本的な考え方

夫婦の一方に不貞行為があった場合、他方の配偶者から不貞相手に対して慰謝料請求が可能です。
判例は、そのような不貞行為は、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は利益を侵害する行為であるから不法行為となる、と説明しています。
同じ理由で、婚姻関係がすでに破綻していたのであれば、そのような権利又は利益がないので、不法行為にあたらないことになります。

これが現在の基本的な考え方になっています。

2 不倫の相手に自由は?

しかし、欧米などでは、不貞相手に対する慰謝料請求は認められていないことが多いようです。
たしかに、夫婦の間で不貞行為が許されないことは納得できますし、不貞行為を行った配偶者に対して慰謝料請求ができるは当然でしょう。

しかし、誰に好意を持って誰と性行為を行うかは、それぞれの人が自由に決めることです。
赤の他人に対して自分の配偶者との性行為を禁ずるのは、まるで配偶者を自分の物として所有しているかのような感じがしないではありません。

夫婦間では貞操を約束していても、赤の他人にまでその約束が及ぶわけでないのはもちろんです。

3 平成31年の判例

平成31年に、夫婦の一方が不貞相手に離婚慰謝料を請求したという事件について、最高裁の判決がありました。
この事件では、不貞行為による慰謝料請求権が時効消滅していたので、不貞行為の相手方に対して離婚慰謝料を請求しました。

これに対して最高裁判所は、夫婦の一方は、不貞行為の相手方に対し、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をするなどして離婚させたと言える特段の事情がなければ、離婚慰謝料を請求することができない、と判断しました。

もちろん、この判決で否定されたのは、不貞の相手方に対する「離婚慰謝料」の請求であり、「不貞慰謝料の請求」が否定されたわけではありません。
しかし、不貞の相手方に慰謝料請求する場合に離婚慰謝料を含めることはできませんし、離婚に至ったからという理由で増額を求めるのも、否定はされないものの難しくなるものと思います。

4 まとめ

不貞行為を行った配偶者にも、その不貞行為の相手方にも、同じように慰謝料請求ができるというわけではありません。
今後は、不貞行為の相手方に対して認められる慰謝料額は、しだいに低額となっていくのかもしれません。