【離婚・男女トラブル】有責配偶者からの離婚請求に必要な別居期間

有責配偶者から離婚請求であっても、いくつかの条件の下で認められる場合があります。
その条件の一つに、「別居期間が相当長期間に及ぶ」というのがあります。
では、どれくらいの別居期間があれば、有責配偶者からの離婚請求が認められるのでしょうか。

1 有責配偶者からの離婚請求が認められる条件

昭和62年の判例変更で、有責配偶者からの離婚請求であっても、

①別居が相当長期間に及ぶ、
②未成熟子が存在しない、
③相手方配偶者が過酷な状態におかれるような事情がない、

という条件の下で認められる余地が出てきました。
そしてそれ以来、別居が相当長期間と言えるかどうかを中心に争われてきました。

では、どれくらいの別居期間があれば、有責配偶者からの離婚請求が認められるのでしょうか。

2 別居期間に関する判例

昭和62年の判例は、「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び」、としていました。
ここから、夫婦双方の年齢や同居期間の長さが判断要素の一つになると考えられます。

平成2年の判例は、「有責配偶者からの離婚請求の許否を判断するにおいて、別居期間(本件は八年)が相当の長期間といえるか否かは、当事者双方の諸事情の変容による社会的意義の変化なども考慮に入れるべきである」(最判平2・11・8)としています。
別居期間が継続するうちに生じた当事者の事情の変化や、社会の変化なども判断要素になると考えられます。
この判例では、別居期間が8年でしたが、別居中の生活費の負担や財産給付の提案などの事情も考慮して、相当長期間にあたるとしています。

3 考察

一般的に、有責配偶者からの離婚請求が認められるには10年の別居期間が必要と言われることがあります。
たしかに、同居期間が長くても、別居期間が10年を超えれば、相当長期間であると認められる傾向にあるとは思います。

しかし、結局は、その他の事情も含めて離婚請求を認めることが信義誠実の原則に反しないかという判断になります。
単に別居期間が10年を超えるかどうかだけで相当長期間かどうかが決められるわけではありません。

②の未成熟子の不存在という条件にしても、「有責配偶者からの離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもってその請求を排斥すべきではない」(最判平6・2・8)とされています。

最初に挙げた3つの条件は、それぞれ別個の条件というわけではなく、総合して離婚請求を認めてよいかが判断される3要素ととらえた方がよいと思います。