【著作権】工業製品と著作権

 「著作権法2条2項は,『美術の著作物』の例示規定にすぎず,例示に係る『美術工芸品』に該当しない応用美術であっても,同条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,『美術の著作物』として,同法上保護されるものと解すべきである。」


Q.当社は家具の製造・販売を行っています。小さな会社ですが,特徴的なデザインの椅子はお客様から好評をいただき,販売から5年を経た今も,ロングセラーとなっています。
 ところがこのたび,この椅子とそっくりな椅子を他社が販売していることに気付きました。販売をやめさせることはできないでしょうか。5年前の当社は資金もなく,これほど売れるとも思っていませんでしたので,意匠登録はしていません。

A.意匠登録をしていなくても,形態を模倣した商品については,不正競争防止法によって販売を差止められる場合があります。しかしご質問の場合,国内で販売を開始してから3年以上を経過していますので,残念ながら適用対象外となります。

 そうすると,他社の販売をやめさせるには,著作権侵害を主張する必要があります。そして著作権は,著作物について発生する権利ですから,著作権を主張する前提として,その椅子が著作物でなければなりません。
 著作権法2条2項は,「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含む」と規定していますので,「美術工芸品」と言えるのであれば問題はありませんが,量産される実用品である椅子について,それが著作物と言えるのでしょうか。

 この点を判断した裁判例として,平成27年4月14日の知財高裁判決があります。
 この判決では,まず,「著作権法2条2項は,『美術の著作物』の例示規定にすぎず,例示に係る『美術工芸品』に該当しない応用美術であっても,同条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,『美術の著作物』として,同法上保護されるものと解すべきである。」とし,その物が「美術の著作物」として著作権法上の保護を受けるかどうかは,上記著作物性の要件を充たすかどうかで判断すべきとの前提を置いています。

 そして,その要件について,
「ある表現物が『著作物』として著作権法上の保護を受けるためには,『思想又は感情を創作的に表現したもの』であることを要し(同法2条1項1号),『創作的に表現したもの』といえるためには,当該表現が,厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,作成者の何らかの個性が発揮されたものでなければならない。表現が平凡かつありふれたものである場合,当該表現は,作成者の個性が発揮されたものとはいえず,『創作的』な表現ということはできない。」
「応用美術は,装身具等実用品自体であるもの,家具に施された彫刻等実用品と結合されたもの,染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするものなど様々であり,表現態様も多様であるから,応用美術に一律に適用すべきものとして,高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。」
としています。
 つまり,独創性までは要しないが,作者の個性が発揮されている必要があるということです。

 そして,権利侵害を主張した物の製品について,二つの特徴をあげて個性が発揮されていると認定し,著作物性を認めました。
 しかしその一方で,相手方の製品はそのうち一つの特徴を備えていないので,結局のところ著作権侵害は認められないと結論しています。

 以上は下級審の判断ですが,仮にこの判断に従うとすれば,ご質問の椅子についても,量産品であるからとか実用品であるからという理由で著作権が発生しないと考える必要はなく,作成者の個性が発揮されているかどうか,発揮されているのはどのような点か,販売をやめてもらいたい他社製品はその部分の特徴を備えているか,という点を検討すべきということになります。そしてこれがYESであれば,その椅子の著作権に基づいて,他社の販売を差止められる可能性があるということです。

 もっとも,あとからこのような心配をするよりも,当初から意匠登録をしておかれることをお勧めいたします。

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