【著作権】書籍の表紙・奥付に著作者名を表示しないことが氏名表示権侵害と認められた。


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京都北山特許法律事務所 法律部門
インフォメール  No.08/2017.01.25
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◆出版社が書籍の表紙・奥付に著作者の氏名を表示しなかったことが
氏名表示権の侵害であるとして,慰謝料請求・差止請求が認められた。
  (東京地裁平成25年3月1日判決)
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著作権法19条1項
 著作者は,その著作物の原作品に,
又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し,
その実名若しくは変名を著作者名として表示し、
又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての
原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
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同3項
 著作者名の表示は,著作物の利用の目的及び態様に照らし
著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、
公正な慣行に反しない限り,省略することができる。
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同14条  著作物の原作品に,又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に,
その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)
又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)
として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は,
その著作物の著作者と推定する。
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◆当事者
亡A:物理学者。
X1~X3:亡Aの相続人。
X4:物理学者。
Y1:出版社。
Y2:Y1の代表取締役,編集者。
Y3:分冊Ⅰの表紙及び奥付に著者として表示されている者。

◆書籍
□本冊:H20.06.10,Y1から出版。
 著者として亡A・X4,監修者としてX4,編集者としてY2が表示されている。
□分冊Ⅰ:H22.04.12,Y1から出版。
 本冊の第1部・第1章とほぼ同じ内容。
 表紙に著者としてY3が,奥付に著者としてY3,編集者としてY2が表示されている。
 前付に,底本の監修者名としてX4,著者名として亡A及びX4が表示されている。
 「まえがき」に,X4の愛弟子であるY3が分冊Ⅰを執筆することになったこと,
底本が本冊であること,底本をできるだけ尊重したこと等が記載されている。
□本冊の本文(本件著作物)
 亡Aが大半の原稿を完成間近としていたものの,書籍とするには未完成の状態で死亡。
その後,Y2がX4の紹介を受け,X4が書籍として完成させるために執筆。

《判決》

■ 亡Aの氏名表示権の侵害の有無

□亡Aの氏名表示権
 分冊Ⅰは,本件著作物の一部を複製,翻案したものであることは明らか。
 本件著作物のうち分冊Ⅰに相当する部分について亡Aの著作権が存在する。
 したがって分冊Ⅰにも亡Aの氏名が著作者名として表示されなければならない。

□亡Aの氏名表示権を侵害するか
 書籍の著作者名は,表紙・奥付等に「著者」「著作者」などとして記載する
方法で表示されるのが一般的であり,読者はそこに表示された者を当該書籍の
著作者として認識する。
 分冊Ⅰについて読者は,著作者がY3であると理解する。「まえがき」は
書籍の内側の記載であり外側から観察しただけでは読み取れないし,
表紙や奥付に亡Aの氏名を著作者名として表示することが
困難・不適当であった事情は認められない。
 前付と「まえがき」によって,本件著作物の著作者が亡Aであり
分冊Ⅰが本冊を分冊化したものと認識できるとしても,
  分冊Ⅰの表紙及び奥付に亡Aの氏名が著作者として表示されず,
Y3が単独著作者として表示されることで,
「創作者であることを主張する利益を害するおそれがない」(19条3項)
と認めることはできない。
 分冊Ⅰの著作者名の表示は亡Aの氏名表示権を侵害する。

■ X4の氏名表示権の侵害の有無

 X4は,亡Aの遺稿に基づき,本件著作物の全体にわたって具体的な
表現の創作に寄与した。
 X4は,亡Aの死後に執筆を依頼されたから,亡AがX4と共同して
本件著作物を創作する意思は有していたとは認められないが,
分冊Ⅰに相当する部分を含め,
本件著作物について二次的著作物の著作者としての権利を有する。
 分冊Ⅰの著作者名の表示はX4の氏名表示権を侵害する。

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