【婚姻費用】婚姻費用減額審判における事情変更の考え方の一例

審判申立に至る経緯

当事者等

 夫Xと妻Yとは,平成8年に婚姻した夫婦です。
 XとYとの間には,平成13年生まれの子Aと,Yと第三者との子である平成元年生まれの養子Bがいて,ともにYが監護していました。  Aは,第一種障害者の認定を受けていました。
 Bは,平成26年に8年間の在学期間が満了したため高校を退学となった後も,病気のため無職・無収入です。

 Xは,平成18年にYと別居し,その後,Cと同居を始めました。平成20年にCが子Dを出産しましたが,Xはすぐには認知していませんでした。

従前の審判等

 平成21年,YはXに対して婚姻費用分担審判を申立てました。審判では,Xの年収261万円,Yの年収0円を認定した上,Aの医療費等の負担を考慮して,Xに対し月額9万円を支払うよう命じました。
 平成22年,Xは離婚訴訟を提起しましたが,棄却されました。

 平成24年,XはDを認知しました。
 そこで,平成25年,Xは,Dを認知したこと,Bが未成熟子でなくなったことを理由として婚姻費用減額審判を申立てました。しかし,裁判所は,Xの年収を293万円と認定した上,Dを理由とするのは信義則ないし公平の見地から許されない,Bは引続き要扶養状態にあるとして却下しました。

 平成26年,Xは,X自身が失職したことを理由に,平成21年の婚姻費用審判の取り消しを求める審判を申立てました。これが本審判です。

裁判所の判断

Xの失職が事情変更となるか

 本審判では,Xは失業手当をもらって求職活動をしているが,48歳という年齢などからすると平成21年の審判当時と同程度の収入を得られる可能性は少ないとして,婚姻費用減額の必要性を認めました。

Bに関する事情変更があるか

 他に事情変更があるかについて,Bについて,高校を退学となった後も無職無収入の状態に変わりはないが,稼働能力がないとまでは認められない,仮に稼働能力がないとしても,成年に達した子については基本的に自助の原則が妥当し,Bの扶養については親族間の扶養義務として考慮すべきであり,婚姻費用分担の一部として考慮するのは妥当でないとして,事情変更を認めました。

Dに関する事情変更があるか

 またDについて,出生から6年,認知から1年半,平成21年の審判から5年が経過し,今後もDの存在を無視したまま婚姻費用分担義務を定めるのはDの福祉の観点から相当でないし,Xの収入が減少しているからDの養育に影響を与える程度は深刻であるとして,事情変更を認めました。

婚姻費用分担額の算定

そして,Xは求職中で近い将来再就職できる可能性があるとして,従前の7割である200万円の収入を認定しました。Yの収入は障害者であるAの監護者であることを考慮して0円と認定しました。

計算式)
Xの基礎収入:200×0.39÷12=6万5000円
Xの生活費指数:100+55(D)=155
Yの生活費指数:100+55(A)=155
婚姻費用の分担額:6万5000円×155÷(155+155)=3万2000円

ここから算定される婚姻費用は3万2000円でしたが,Aに関する費用を特別事情として考慮の上,月額6万円と認定しました。

コメント

Xは,平成21年の審判のときからDを扶養していたのでしょうから,平成24年に認知したからという理由で改めて減額を求めるのは,やはり少々無理だと思います。ただ,本審判ではXの収入が減少していることから,Xの信義則違反の責任をBに負わせることになるのを無視できなかったのだと思います。