【祭祀承継】家庭裁判所が祭祀承継者を指定する際の考え方の一例

 -主宰者の指定も慣習もないので,祭祀財産の承継者を決めるにあたっては,被相続人との間の身分関係,事実上の生活関係,被相続人の意思,祭祀承継の意思及び能力,その他一切の事情を斟酌して決定する。-

前提事実

生活状況

 XとYとは母である被相続人と父であるAとの間の子であり,昭和44年ころにYが婚姻して独立するまでは,一緒に暮らしていました。
 昭和54年,Aが死亡しました。被相続人は仏壇を購入し,位牌を安置し,霊園に墓地を建立するなど,祭祀を主宰しました。
 Xは昭和56年に婚姻して3人の子どもがいましたが,婚姻後も被相続人と同居していました。
   そしてAの七回忌,十三回忌,十七回忌は,いずれも被相続人が主宰し,Xが補助しました。

被相続人の移動

 Xは,被相続人から5100万円の援助を受け,隣接地を購入して家の建て替えをし,被相続人の部屋も作りました。
 この建て替えの間の数日,被相続人はY宅で過ごすことになりました。しかしXが被相続人を迎えに行くとYに拒否され,Xは被相続人を連れて帰ることはできませんでした。
 平成21年に自宅が完成したのでXは新居に引っ越しましたが,XがY宅から被相続人を連れて帰ることはできませんでした。
 平成22年,被相続人はY宅において脳梗塞を発症し入院,その後平成23年,死亡しました。

被相続人の死亡後

 Yは,被相続人の葬儀を密葬で行い,仏壇を購入してY宅に設け,永代使用承諾証紛失届を霊園に提出して墓地の使用者を被相続人からYに変更しました。
 その後,Yは被相続人の死亡を被相続人の妹に報告し,この妹がXに電話をしたことにより,Xは被相続人の死亡を知ることになります。


裁判所の判断

被相続人の指定

 被相続人は,仏壇,位牌,墓地の永代使用権を有していたが,祖先の祭祀を主宰すべきものについて,指定していない。

慣習の存在

 被相続人,X,Yが居住する地域において,祭祀を主宰すべきものについて慣習が存在するとは認められない。

祭祀承継者の決定基準

 指定も慣習もないので,祭祀財産の承継者を決めるにあたっては,被相続人との間の身分関係,事実上の生活関係,被相続人の意思,祭祀承継の意思及び能力,その他一切の事情を斟酌して決定することとなる。

 Xが被相続人と同居し,Aの法事等を補助していたことから,被相続人は祭祀承継者としてXと考えていたと推測される。
 被相続人がY宅で同居したのはXと被相続人との関係が悪化したからではない。
 Yが,Xや被相続人の妹に被相続人の危篤状態も死亡事実も伝えず密葬で済ませたことは,関係者の意思を踏まえて末長く祭祀を主宰していくにふさわしい行為ではない。
 したがってXを被相続人の祭祀財産の承継者と定めることが相当である。


コメント

 新しい墓地(永代使用権)を購入しようとすると高額になるため,墓地を誰が使うかをめぐって祭祀承継が争われます。
 その場合,民法では「被相続人の指定」があればそれに従うと定めていますので,被相続人との生活上の関係が重視されることになります。
 本審判で祭祀承継の意思・能力を問題にしているのは,継続して祭祀を主宰できるのかを重視しているものと考えられます。

参考条文

民法
(祭祀に関する権利の承継)
第897条  系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する。
2  前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める。