【資金管理】送金代行業務と「為替取引」

 依頼人の資金を依頼人に代わって受取人に送金するような送金代行業務は,銀行法にいう「為替取引」に該当しない。

事案の概要

 X社は,資金移動業務及びそのコンサルティング業務を目的として設立された会社です。

 Yは,A社からFX取引の勧誘を受け,A社名義の銀行口座に150万円,B社名義の銀行口座に300万円,X社名義の銀行口座に800万円を振込みました。しかしA社らは実際にはFXの投資をしておらず,Yが元本確定の意思を告げるとA社と連絡がつかなくなったというFX投資詐欺の事案です。

不法行為の主張

 X社は,B社の顧客がX社名義の口座に払い込んだ金員をB社名義の口座へ送金することをB社から受任して,口座を開設しました。X社は,この口座に一定額が集まると,そこからX社名義の別の口座に送金し,さらにそこから香港上海銀行のC社名義の口座名義に送金していました。

 資金決済法の登録を受ければ資金移動業者として為替取引を営業できますが,X社はその登録も受けていませんでした。
 そこでYは,X社が登録を受けずに為替取引を行ったという不法行為を主張し,これを前提に,主位的に詐欺の共同不法行為に基づいて,Xに振込んだ1250万円全額に弁護士費用125万円を加えた損害賠償を求め,予備的にXの口座に振り込んだ800万円につき不当利得返還を求めました。

原審は,Yの主位的請求を認めたので,X社が控訴したのが本件です。本判決では,送金代行業務が銀行法2条2項の「為替取引」にあたるかが判断されています。

「為替取引」にあたるかの判断

 本判決は次のように述べてこの主張を排斥しました。

 銀行法が為替取引を免許制の対象としたのは,隔地者間の資金授受を媒介するにあたって,支払等を確実にするための資金手当のシステムを確立するなど,媒介となる機関と利用者との間で高度の信用を保持できる体制を構築する必要から,十分な信用を持たない者が為替取引を行えないようにして,利用者保護と金融の円滑を確保することにある,

 依頼人の資金を依頼人に代わって受取人に送金するような送金代行業務は,銀行法にいう「為替取引」に該当しない,

 平成13年の最判は,送金代行業務を取扱ったものではない。

 X社は,B社の依頼により,B社の顧客から振り込まれた金員をC社名義の口座に送金する業務を行っていたが,これはX社の口座に入金させたのち,銀行の為替取引システムを利用してC社の口座に移動させる送金代行業務であるから,独自に資金手当のためのシステムを確立する必要はなく「為替取引」に該当しないし,
したがって「資金移動業」にも該当しない。

雑感

 本件では,B社がX社に依頼して,B社に支払われた金員をX社がいったん口座に管理するということなので,顧客はX社の口座に振り込むことによってB社に支払っていることになります。
 顧客がX社の口座に振り込んだ後,仮にX社が倒産した場合,そのリスクはB社が負担するので,顧客Yが二重払いの危険を負うことはありません。このような場合には,とくに利用者保護を図る必要はないというのが判決の論拠のようです。
 いわゆる収納代行業者は資金移動を依頼されているわけではないから資金移動業の登録は不要であるとする主張と,論拠は同じと言えそうです。

参考条文

銀行法
第2条  この法律において「銀行」とは、第4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいう。
2  この法律において「銀行業」とは、次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
二  為替取引を行うこと。
第4条 銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。

最判平13・3・12
銀行法2条2項2号は,それを行う営業が銀行業に当たる行為の一つとして「為替取引を行うこと」を掲げているところ,同号にいう「為替取引を行うこと」とは,顧客から,隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて,これを引き受けること,又はこれを引き受けて遂行することをいうと解するのが相当である。

資金決済法
第2条
  2 この法律において「資金移動業」とは,銀行等以外の者が為替取引(少額の取引として政令で定めるものに限る。)を業として営むことをいう。
3 この法律において「資金移動業者」とは,第三十七条の登録を受けた者をいう。
第37条  内閣総理大臣の登録を受けた者は,銀行法第4条第1項及び第47条第1項の規定にかかわらず,資金移動業を営むことができる。

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