【特許】使い捨て紙おむつ事件

 被告製品は本件補正により請求項1から意識的に除外されたものに包含され,均等論を主張できない特段の事情が存在する。

Xの特許

 X(大王製紙株式会社)は,発明の名称「使い捨て紙おむつ」の特許権者で,
その発明の請求項1は,次のとおりでした。

 使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成され,前記ウエスト開口縁を含むウエスト部と,該ウエスト部の下端からレッグ開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において,周方向に沿い,かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し,かつ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつであって,
 前記伸縮部材は,前記胴回り部の60%以上の長さ範囲にわたって前記間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され,
 前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,
 前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく,かつ太さが620dtex以下で,伸長率が150~350%である,
  ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。

事案の概要

 Xは,Y(ユニ・チャーム株式会社)の製造・販売する紙おむつが上記特許発明の技術的範囲に属するとして,Yに対し損害賠償を求めました。

原判決

 原判決は,Y製品はフィットギャザーの一部が腰下部に配置されているが,周方向に連続して配置されていて「中央部を除く左右脇部に配置され」ていないから構成要件Cを充足しない,したがって請求項1の技術的範囲に属しないと判断し,Xの請求を棄却しました。

 これに対してXが控訴し,控訴審において,構成要件Cを文言解釈上充足しないとしても,均等の5要件を充たしているから本件発明の技術的範囲に属すると,控訴審で新たに均等侵害を主張しました。

本判決

文言侵害

 本判決は,原審と同様に被告製品は構成要件Cを充足しないとして文言侵害を否定し,均等侵害を検討しました。

均等侵害

 そして均等侵害の第5要件(意識的除外等の特段の事情)について,

 出願当初明細書の【0050】には,「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。」「このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。」との記載がある,

 一方,構成要件Cは,出願後の補正によって加えられたことが明らかである,

 補正前の請求項1には,
①腰下部伸縮部材が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実施形態と,
②腰下部伸縮部材が吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定される実施形態が選択的に存在し,
いずれも請求項1に包含されていた,

 補正後の請求項1においては,このうち前者(①)が減縮により除外され,後者(②)が補正後による減縮後も残ったことが認められる,

 この補正を客観的・外形的に見れば,
腰下部伸縮部材の一部が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,その余の腰下部伸縮部材が製品の左右脇部において配置固定されるという実施態様を,本件発明の技術的範囲から意識的に除外したものと認められる。
 Y製品は本件補正により請求項1から意識的に除外されたものに包含され,均等論を主張できない特段の事情が存在する,

と述べて,均等侵害も否定しました。

雑感

 均等侵害は例外的であり,文言侵害でないが均等侵害であるというのには,特許法70条1項からしても高いハードルがあると考えておくべきではないでしょうか。

参考条文

特許法
(特許発明の技術的範囲)
第70条  特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

均等の5要件(最判平10・2・24ボールスプライン事件)
 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,
① 右部分が特許発明の本質的部分ではなく,
② 右部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,
③ 右のように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,
④ 対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,
⑤ 対象製品等が特許発明の特許出願時手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,
右対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。

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