【離婚・養育費】養育費に関するカリフォルニア州裁判所の判決に,日本における執行判決が認められた例

 算定基準に倍近い違いがあるが,カリフォルニア州裁判所の判決の内容が,わが国の法秩序に反するとはいえない。

事案の概要

 XとYとは,平成8年に婚姻して,3人の子(A,B,C)をもうけました。
 平成18年,XとYとはアメリカのカリフォルニア州に移住しましたが,Yは,平成23年に帰国しました。

 Xは,Yに対し,同年2月,カリフォルニア州の裁判所に離婚等請求訴訟を提起しました。
 その訴状が翌月Yに送達されたので,Yは応訴しました。

 裁判所は,平成24年11月, ①XとYとの離婚のほか,
② 同年9月1日以降の養育費として,A(当時14歳)について月額669ドル,B(当時10歳)について月額1017ドル,C(当時8歳)について月額1730ドルの合計3416ドルを支払うこと,
③ 同年4月15日からの養育費未払額6万0936.5ドル及びこれに対する利息4340.61ドルを同年11月1日までに支払うこと,
④ ②及び③の未払額に対する各弁済期から支払済みまで年10%の割合による利息を支払うこと,
を命じる判決を言い渡し,確定しました。

 外国の裁判所がした確定判決は,民事訴訟法118条の要件を満たせば日本国でも有効となりますが,これに基づいて執行する場合には,民事執行法24条に基づく執行判決が必要になります。

 そこでXは,②~④について,この執行判決を求めたのが本件です。

判決の概要

Yの反論

 Yは,次のような理由で,カリフォルニア州裁判所の判決の内容は,日本国における公序良俗に反する(民訴法118条3号)と主張しました。
 判決が支払いを命じる額は,月額合計3416ドルであり,これを1ドル102円で換算すると34万8432円となり,日本における養育費の適性額(月額20~22万円程度と算定されるようである。)を大幅に上回る。
 Yの手取額は月39万円程度であり,養育費を支払うとYの生活費として残るのは4万円程度であり,生存権を保障した日本の法秩序に反する。

裁判所の判断

 裁判所は,次のような理由を挙げて,被告の主張を排斥しました。

日本における「適正額」を上回るとの点について

 民事訴訟法118条は,外国判決の内容がわが国の一般的な基準と合致しない場合があることを当然の前提としている。
 わが国における養育費の適性額が20~22万円だったとしても,1ドル102円で換算した金額が34万8432円,120円で換算した金額が40万9920円となる外国判決の養育費の額が,わが国の公序良俗に反するほど高額とは言えない。

生存権を保障した法秩序に反するとの点について

 1ドル102円で換算した養育費の年額は418万1184円であり,1ドル120円で換算した年額は491万9040円である。
 これに対してYの給与・賞与の額は,平成24年が1362万5936円,平成25年が1432万2235円であり,平成26年は1482万6400円程度と予想される。
 1ドル120円で換算しても,養育費の額は被告の年収の3分の1程度にすぎない。
 Yの平成26年7月の給与振込額は39万1979円であるが,それ以外に多額の賞与を得ていると言えるから,生活に大きな支障が生じるとは考え難い。
 被告の収入や為替相場に変動があることを考慮しても,外国判決の内容はわが国の法秩序に反するといえない。

雑感

 算定基準に倍近い違いがあっても,アメリカの算定額が日本の公序良俗に反するという判断を得るのは,なかなか難しいのだろうと思います。

参考条文

民事訴訟法
(外国裁判所の確定判決の効力)
第118条 外国裁判所の確定判決は,次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り,その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。

民事執行法
(外国裁判所の判決の執行判決)
第24条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは,債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し,この普通裁判籍がないときは,請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は,裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第1項の訴えは,外国裁判所の判決が,確定したことが証明されないとき,又は民事訴訟法第118条各号に掲げる要件を具備しないときは,却下しなければならない。
4 執行判決においては,外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。