【民事訴訟手続】訴訟上の和解成立による訴訟終了宣言判決に対する控訴

 訴訟上の和解成立による訴訟終了宣言判決に対して被告のみが控訴した場合,控訴審が自判しようとするときは控訴の全部を棄却するしかない。

事案の概要

 Yは,Xに対し,貸室の明渡しと賃料相当損害金の支払いを求めて訴訟を提起しました。

 XとYとの間には,平成25年5月8日,訴訟上の和解が成立しました。
 しかしXは,同月22日,この和解の無効を主張し,訴訟手続きの続行を求めて期日指定の申立てをしました。

 第1審は,和解が成立したとして,訴訟は終了した旨の判決をしました。
 これに対し,Xが控訴しましたが,Yは控訴も附帯控訴もしませんでした。

 控訴審は,和解は無効であると判断してYの請求について一部を認め,第1審判決を取消して和解が無効であることを確認し,Yから40万円を支払うことと引換えに貸室を明け渡すことを命じる判決をしました。

 これに対してXが上告したのが本件です。

最高裁の判断

 最高裁は,控訴審の判決を破棄し,控訴を棄却しました。理由は次のとおりです。

①いずれの当事者も和解の無効を主張していないのに,主文において和解無効を確認した原判決は,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法がある。

②和解によって訴訟が終了したことを宣言する訴訟終了判決は,訴訟が終了したことだけを確定する訴訟判決であるから,Yの請求を一部認容する本案判決は,和解の内容にかかわらず,形式的にはXにとってより不利益である。したがって,このような判決をすることは不利益変更禁止の原則に違反する。

③訴訟終了判決に対する控訴の一部のみを棄却すると,請求の一部についてだけ訴訟終了の効果を生じさせることになって相当でない。控訴審は,和解が無効で請求の一部に理由があるとして自判しようとするときも,控訴の全部を棄却するしかない。

雑感

 ②の考え方を採用すると,Yが控訴も附帯控訴もしなかった場合,裁判所がYの請求の一部に理由があると判断して,それが和解の内容よりもXに有利と考えられるものだったとしても,その部分を認容する判決をすることはできません。

 そして訴訟上の和解による訴訟終了は,和解の対象となった請求全体に効果が及びますから,控訴審の判決では,全体に及んだ終了の効果を肯定するか否定するかしかありません。
 控訴審が自判する場合は,控訴を棄却するしかないということになります。

 とすると,この場合の控訴審は,民訴法307条本文を準用して差し戻すのが筋だった,ということでしょうか。

参考条文

民事訴訟法
(判決事項)
第246条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。

(和解調書等の効力)
第267条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは,その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

(第一審判決の取消し及び変更の範囲)
第304条 第一審判決の取消し及び変更は,不服申立ての限度においてのみ,これをすることができる。

(事件の差戻し)
第307条 控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。