【民事訴訟手続】中国判決についてした執行判決の請求が棄却された例(東京地裁平成27年3月20日決定)


外国判決をした国における承認,執行に関する法令の文言を単に参照するのみならず,判例や有権的解釈その他の裁判官が依拠することが想定される規律ないし基準を考慮し,当該外国における同種類の判決等の承認,執行の条件に関する実際の運用が民訴法118条各号所定の条件と実質的に異ならないかを検討すべきである

事案の概要

 Xは中国在住の女性で,Yは出版社です。

 Xは,Yが出版した書籍にXの名誉を毀損する記載がされているとして,中国の裁判所に,Yに対して損害賠償請求訴訟を提起しました。
訴状はYに送達されましたが,Yは訴訟手続に出席しませんでした。
 中国裁判所は,Yの出版した書籍によってXに精神的損害がもたらされたと判断して,
①判決の効力発生日から30日以内に80万元の賠償をすること,
②この書籍の出版停止,回収・廃棄,
③判決の効力発生日から30日以内に謝罪広告を掲載すること,
を命じました。

 この外国判決はYに送達され,確定しました。

 そこでXは,この外国判決について日本での執行判決を求めました。

裁判所の判断

 本判決は,民事訴訟法118条4号の「相互の保証があること」について次のように判断し,Xの請求を棄却しました。

 「相互の保証」の要件は,一方的に一方が他方の判決の効力を認めるのが妥当でないという国家対等の原則に基づいて要求されるものである,

 その判断は,
 承認,執行が求められている外国判決をした国における承認,執行に関する法令の文言を単に参照するのみならず,判例や有権的解釈その他の裁判官が依拠することが想定される規律ないし基準を考慮し,
 当該外国における同種類の判決等の承認,執行の条件に関する実際の運用が民訴法118条各号所定の条件と実質的に異ならないかを検討すべき,
 当該外国において,およそ一般的にわが国の裁判所がした同種類の判決の承認,執行が認められないとされているときは,相互の保証がないと解すべきである,

 中国では互恵関係の存在に基づいて外国判決を承認・執行した例はなく,最高人民法院は,特に留保や限定を付すことなく,日本と中国との間に互恵関係が存在しないとの見解を示している,
 各人民法院は最高人民法院による司法解釈の内容に従って個別事案を判断し,日本裁判所のした差押命令の執行申立てを却下している,
 今後も,各人民法院では,日本との間に互恵関係が存在しないとの最高人民法院の回答に従って判断されると想定される,

 現時点では,中国において,本件外国判決と同種類の財産法上の事件に係る判決について互恵関係が否定され,これに効力を付するような判断がされる余地はない,

 よって,日本と中国との間には,相互の保証があるとは認められない。

雑感

 この判決では,法令の文言の比較だけでなく,実際の運用を検討すべきとしています。
 こういう判決があるので,法令だけを見て判断するのは危険だということでしょうか。

参考条文

民事訴訟法
(外国裁判所の確定判決の効力)
第118条 外国裁判所の確定判決は,次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り,その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。

最判昭58・6・7
「民訴法200条四号に定める「相互ノ保証アルコト」とは,当該判決をした外国裁判所の属する国(以下「判決国」という。)において,我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決が同条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するものとされていることをいうものと解するのが相当である。」

民事執行法
(外国裁判所の判決の執行判決)
第24条 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは,債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し,この普通裁判籍がないときは,請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は,裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第一項の訴えは,外国裁判所の判決が,確定したことが証明されないとき,又は民事訴訟法第百十八条各号に掲げる要件を具備しないときは,却下しなければならない。
4 執行判決においては,外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。