【親子】特別養子縁組の申立てを抗告審で認容した例

 抗告人両名は養親としての適格性を有し,未成年者との適合性にも問題がないことが認められるから,未成年者の健全な育成のために特別養子縁組を成立させて抗告人両名に未成年者を監護養育させるのが相当である。

事件の経緯

事案の概要

 X1,X2は,25歳以上の夫婦で,子どもがいませんでした。
 未成年者Aの実母Bは,Cと交際中にAを妊娠しましたが,その後にCと別れたため,Aを1人で育てることはできず,他人に預けるしかないと考えました。
 Bの祖母Dの従姉妹であったX2は,Aを引き取ってもらえないかという相談を持ちかけられ,熟慮の末,これに応じることにしました。

 X1,X2は,平成26年,Bが産院から退院した後から,Aの監護を行うようになりました。

 Bは,17歳で出産した後,Aと1度も会っていませんでしたし,またAは認知も受けていませんでした。
 Bは飲食店で週3日ほど働いていましたが,経済的な余裕はなく,BもDも特別養子縁組に同意していました。

 一方,X1,X2は健康で経済的にも安定していて,Aの監護環境も整備されていました。特別養子縁組の審判申立て後6か月以上の期間でも,X1,X2の監護に問題はなく,Aもよく懐いて順調に成長していることが見て取れました。

原審の判断

 X1,X2は,平成26年,奈良家裁にAをX1,X2の特別養子にするとの審判を申立てました。
 これに対して奈良家裁は,
・特別養子縁組が認められるためには,養子となる者に民法817条7に定める要保護事情があり,かつ養子となる者と実父母との身分関係を絶つことが養子となる者の利益のために特に必要とされる事情のあることを要する,
・本件ではAとB・Cとの身分関係の存続が,Aの養育監護にとって障害となっているわけではない,
・したがって民法817条の7が定める要件を欠いている,
として,X1,X2の申立てを却下しました。

そこでX1,X2は,平成27年,即時抗告しました。

裁判所の判断

 大阪高裁は,次のように述べて,本件の場合には特別養子縁組を成立させるべき要件をすべて満たしているとして原審判を取消し,特別養子とすることを認めました。
・BがAを監護することは著しく困難であると認められる。
・X1,X2は養親としての適格性を有し,Aとの適合性にも問題がない。
・したがって,Aの健全な育成のために特別養子縁組を成立させてX1,X2にAを監護養育させるのが相当であり,AをX1,X2の特別養子とすることがAの利益のために特に必要がある。

雑感

 民法817条の7の「子の利益のため特に必要がある」については,実父母との親子関係の終了が養子となる者の利益になることが含まれると考えられています。
 原審では,身分関係の存続が養育監護にとって積極的に障害となっていない限り必要性は認められないと考えたようですが,抗告審では,現状において実母との関係を残した方がよいのかどうかで必要性を判断したように思います。

 いずれにしても,人の将来についての判断になりますので,裁判所としても難しい判断に違いないと思います。

参考条文

民法
(特別養子縁組の成立)
第817条の2 家庭裁判所は,次条から第817条の7までに定める要件があるときは,養親となる者の請求により,実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。

(養親の夫婦共同縁組)
第817条の3 養親となる者は,配偶者のある者でなければならない。

(養親となる者の年齢)
第817条の4 25歳に達しない者は,養親となることができない。ただし,養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても,その者が20歳に達しているときは,この限りでない。

(養子となる者の年齢)
第817条の5 第817条の2に規定する請求の時に6歳に達している者は,養子となることができない。ただし,その者が8歳未満であって6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は,この限りでない。

(父母の同意)
第817条の6 特別養子縁組の成立には,養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし,父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待,悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は,この限りでない。

(子の利益のための特別の必要性)
第817条の7 特別養子縁組は,父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において,子の利益のため特に必要があると認めるときに,これを成立させるものとする。

(監護の状況)
第817条の8 特別養子縁組を成立させるには,養親となる者が養子となる者を6箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。