【債権回収】信用保証協会と銀行間の保証契約に定められた「保証契約に違反したとき」にあたる場合(最高裁平成28年1月12日決定)

 保証に関する基本契約上の付随義務として,信用保証協会と銀行は,融資に先立ち,主債務者が反社会的勢力であるか否かについて相当と認められる調査をすべき義務を負う。

事件の経緯

 Y銀行とX信用保証協会とは,昭和41年8月,信用保証に関する基本契約を締結しました。
 この基本契約には,保証契約締結後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合の取扱いについての規定はありませんでした。

 Y銀行は,A社から3回にわたって融資の申し込みを受けました。
 そこで審査の上,平成20年7月から平成22年8月にかけて,X信用保証協会に信用保証を依頼し,A社とX信用保証協会とは,保証委託契約を締結しました。
 Y銀行は,上記期間にかけて,A社との間で金銭消費貸借契約を締結し,それぞれ3000万円,2000万円,3000万円を貸付けました。
 X信用保証協会は,同時期に,Y銀行との間で,上記貸付けについて連帯保証契約を締結しました。この保証契約についても,契約締結後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合の取扱いについて,規定はありませんでした。

 一方,警視庁は,A社について,平成22年12月,A社の代表取締役が暴力団員であり,A社の経営を実質的に支配しているとして,公共工事の指名業者から排除するよう求め,結果,公共工事について指名を行わないことが国土交通省から通知されました。

 平成23年,A社は返済が滞り,Y銀行はX信用保証協会に対して訴訟を提起し,保証契約に基づく保証債務の履行を請求しました。

裁判所の判断

原審の判断

 Y銀行の請求に対し,X信用保証協会は, ① 主債務者が反社会的勢力である場合は保証契約を締結しないにもかかわらず,そのことを知らずに保証契約を締結したのだから,保証契約は要素の錯誤により無効である, ② 反社会的勢力に貸付けることは保証契約違反であるから,信用保証に関する基本契約に定めた免責事由に該当し,X信用保証協会は債務の履行を免れる, と主張していました。
 ①の動機の錯誤については,最判昭29・11・26で,表意者が当該意思表示の内容として動機を相手方に表示した場合でない限り法律行為の要素とはならない,とされています。
 原審は, ①について,A社が反社会的勢力であることが判明した場合,仮にX信用保証協会が保証債務を履行しない考えであったとしても,そのことは明示にも黙示にもY銀行に対して表示されていない,したがって意思表示に要素の錯誤があったとはいえないと判断し, ②について,各貸付けが反社会的勢力に対するものでないことが各保証契約において保証条件であったとは認められないから,X信用保証協会が免責されることもない,と判断しました。

最高裁の判断

  最高裁は,

①について,

 意思表示における動機の錯誤が法律行為の要素に錯誤があるとして無効をきたすには,その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり,もし錯誤がなかったら表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要し,その動機は,たとえそれが表示されていても,当事者の意思解釈上,それが法律行為の内容とされたものと認められない限り,表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当であると述べた上,
 保証契約において主債務者が反社会的勢力でないことは主債務者に関する事情の一つであって,当然に保証契約の内容となっているとはいえない,
 主債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明した場合の取扱いが契約に定められていないことからすると,そのような場合に保証契約の効力を否定することまでを前提にしていたとはいえない,  A社が反社会的勢力でないことというX信用保証協会の動機は,,明示・黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,保証契約の内容となっていたとは認められず,意思表示に要素の錯誤はない,と判断しました。

②については,

 金融機関・信用保証協会は,「企業が反社会的勢力による被害を防止する指針」により,反社会的勢力との関係を遮断する社会的責任を負っていることを共通の認識としている,
 しかし,融資を受けようとするものが反社会的勢力であるか否かを調査する方法は限られている,
 保証に関する基本契約上の付随義務として,X信用保証協会とY銀行は,融資に先立ち,主債務者が反社会的勢力であるか否かについて相当と認められる調査をすべき義務を負う,
 Y銀行がこの義務に違反し,反社会的勢力を主債務者とする融資について保証契約が締結された場合には,免責条項にいうY銀行が「保証契約に違反したとき」に当たる,

と判断し,この点の審理を尽くさせるため原審に差し戻しました。

雑感

 ①については,保証契約というものの性質上,主債務者の経済的な信用についての動機が保証契約の内容になるとしても,反社会的勢力であるかどうかは必ずしもそうではない,ということでしょうか。実際のところ完璧な調査は不可能でしょうから,事後にこれが判明して保証契約が無効になったら銀行はたいへんでしょう。
 そしてその点は,②に関して一般的に行われる方法での調査義務を認めていますが,銀行だけでなく信用保証協会にも同義務を認めている点は,一応見ておく必要があるかと思います。

参考判例

最判昭37・12・25
「動機の錯誤が法律行為の無効を来たすためには,その動機が明示又は黙示に法律行為の内容とされていて,若し錯誤がなかつたならば表意者はその意思表示をしなかつたであろうと認められる場合でなければならない。従つて動機が表示されても意思解釈上動機が法律行為の内容とされていないと認められる場合には,動機に存する錯誤は法律行為を無効ならしめるものではない。」