【企業統治】議案を否決する株主総会決議の取消しを求める訴えの適法性

 ある議案を否決する株主総会の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である。

事案の概要

訴訟提起までのいきさつ

 Y社は,レストランの経営・運営管理を目的とする株式会社で,非取締役会設置会社です。
 Y社の株主はZ,X1,X2の3名であり,Zが150株,X1とX2とがそれぞれ75株を持っていました。
 3名の株主は,いずれも代表権のある取締役です。

 平成26年5月,Zは,X1及びX2の同意を得ず,X1及びX2の取締役解任を議題とする臨時株主総会を招集しました。
 Y社は,この株主総会において,取締役解任の件をいずれも否決する議決を行いました。そのためZは,X1,X2の取締役解任の訴えを提起しました。
 この取締役解任の訴えは,「当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき」が要件の一つになっています(会社法854条)。

 そこでX1,X2は,株主総会はその招集に瑕疵があるとして,上記解任の訴えにおいて上記否決決議要件を欠くと主張するとともに,本件訴訟を提起しました。
 これに対しY社は,議案を否決した決議からは訴訟によって変動させるべき法律関係は生じていないから,訴えの利益はないと主張して争いました。

下級審の判断

 第1審は,否決決議が取り消されるかどうかによって解任の訴えの要件を具備するかどうかが左右される関係にあることを理由に訴えの利益を認めたうえで,株主総会の招集決定は取締役の過半数の決定を経ていないとして,X1,X2の請求を認容しました。

 これに対し原審は,決議取消の訴えの対象となる決議は,第三者に対しても効力を有する決議をいい,議案を否決する決議はこれにあたらないとして,X1,X2の訴えを却下しました。

最高裁の判断

 最高裁は,次のように述べて,X1,X2の上告を棄却しました。

 会社法は,瑕疵のある株主総会決議について,決議の日から3か月以内に限って訴えをもって取消しを請求できる旨を規定して法律関係の早期安定を図り,当該訴えにおける被告,認容判決の効力が及ぶ者の範囲,判決の効力も規定している。
 このような規定は,株主総会の決議によって,新たな法律関係が生ずることを前提とするものである。

 しかし,ある議案を否決する株主総会の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし,当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもない。

 したがって,ある議案を否決する株主総会の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である。

雑感

 この判決には,「否決の決議がされたことがなんらかの法律効果の発生の要件とされているような場合は,否決の決議を取り消すのではなく,効果発生要件としての否決の決議には当たらないというような解釈で法律効果の発生を否定するといった処理が可能であろう」という補足意見が付されています。
 本件の場合のX1,X2は,解任の訴えの方で,否決決議には瑕疵があるから会社法854条の要件を具備しないという主張をして,この点を審理するということになるでしょうか。

参考条文

会社法
(株式会社の役員の解任の訴え)
第854条 役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず,当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第323条の規定によりその効力を生じないときは,次に掲げる株主は,当該株主総会の日から30日以内に,訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。