【フランチャイズ】契約条項に基づいて契約終了後の営業禁止を求めることが信義則違反とされた例

 フランチャイズ契約が終了した場合にフランチャイジーに課される競業避止義務は,フランチャイズシステムの顧客・商圏を保全し,ノウハウ等の営業秘密を保持する目的において合理性を有する。他方,競業避止義務はフランチャイジーの営業の自由を直接的に制約するものであるから,制約の程度や契約終了の経緯に照らし,フランチャイジーに主張することが信義則に違反する場合がある。

事案の概要

当事者

 Xは,時計やメガネの販売・修理を目的とする株式会社で,昭和44年からの本店を含め時計店として3店,メガネ店としてフランチャイズ店4店を営業していました。
 Yは,時計・宝石等の製造販売と,そのフランチャイズシステムによる事業を目的とする株式会社で,全国で250店舗を展開しています。

フランチャイズ契約とショッピングモールAへの出店

 Xは,平成11年8月,Yとの間で,同年9月から平成13年9月までを契約期間とするフランチャイズ契約(本件契約)を締結しました。そしてこの契約に基づき,ショッピングモールAにA店を出店しました。
 本件契約は2年ごとに更新され,契約期間は平成27年8月までとなっていました。

 平成25年9月,XとYとは覚書を締結しました。その覚書には,次のような条項が含まれています。

5条(加盟店による契約の終了及び競合禁止について)
 1項 Xは,本件契約終了以降2年間は,自営も含め,同一商業施設で,同一の営業をしてはならないものとする。ただし,Y自らが,廃業した場合は,その限りではない。
 2項 本件契約を終了した場合,Xは,Yの指定する業者により,Xの費用で,売場の原状回復を行うものとする。
 3項 本件契約書23条2項の文面にある「Yシステムの特徴を示す全ての物件」には,Yが,設計・企画・デザインして施工した店舗造作はもちろん,別紙①什器・備品一覧表,別紙②Y什器&ツール一覧表,別紙③Yラッピングツール一覧表が,含まれている。Xがリース会社とリース契約を結ぶ什器に関しては,Xの費用でリース契約を終了し,廃棄処分証明書の写しをYに提出するものとする。

ショッピングモールBへの出店申込み

 Xは,平成26年1月,ショッピングモールAから電車で片道30分程度の距離にあるショッピングモールBに,Yのフランチャイズとしてではなく,直営店として時計店の出店を申し込みました。

本件契約の解約通知と直営店の開業

 Yは,平成26年7月,Xに対し,本件契約22条3項(「本件契約の有効期間中といえども,両当事者は,6か月前までに予告して,これを自由に解約することができます。」)に基づいて,本件契約の解約を申し入れ,この申入れの到達から6か月が経過することにより,本件契約終了以降2年間は,自営も含め,ショッピングモールAで時計の小売りをしてはならない義務が発生する旨の通知を行いました。
 これは,ショッピングモールBに直営店を出店しようとしたXに対し,当該出店は本件契約3条2項の「店舗の新設」にあたるためYの「文書による許可」がない限り許されず,ロイヤリティーの支払いを要するとYが主張したことに端を発したことでした。

Xの訴訟提起

 Xは,平成26年12月,ショッピングモールBにXの「ショッピングモールB店」を開店しました。またショッピングモールA内のA店を改装し,平成27年1月から,Xの「ショッピングモールA店」を開店して営業を始めました。
 そして,①本件契約上の競業禁止条項はYの解約申入れによる契約終了の場合には適用されない,②同条項は「優越的地位の濫用」であり公序良俗に反し無効である,③Yの解約申入れの経緯からすれば同条項を適用することは信義則に違反すると主張し,Yに対し,平成27年1月から2年間の競業禁止義務が存在しないことの確認を求めて訴訟を提起しました。

裁判所の判断

 裁判所は,①本件契約上の競業禁止条項はYの解約申入れによる契約終了の場合にも適用されるとしましたが,③Yが同条項に基づいてXにショッピングモールAにおける時計店の営業の禁止を求めることは信義則に反し許されないとして,Xの請求を認容しました。
 その理由は,次の通りです。

①フランチャイズ契約が終了した場合にフランチャイジーに課される競業避止義務は,フランチャイズシステムの顧客・商圏を保全し,ノウハウ等の営業秘密を保持する目的において合理性を有する。他方,競業避止義務はフランチャイジーの営業の自由を直接的に制約するものであるから,制約の程度や契約終了の経緯に照らし,フランチャイジーに主張することが信義則に違反する場合がある。
②本件契約3条2項の「店舗」は,同条1項の「Yシステムによる店舗」という規定を受けたものであり「Yシステム」を用いた店舗でなければ同条2項の「店舗の新設」にあたらない。そしてXが「Yシステム」を用いた店舗をショッピングモールBに出店しようとしたと認めることはできないから,本件解約についてXに帰責性があったとはいえない。
③Xに帰責性がなく,Yの解約申入れによって本件契約が終了したのだから,YのショッピングモールAにおける商圏を保全すべき正当性は乏しい。
④売上高からすると,ショッピングモールAにおけるXの時計店の営業が2年間も禁止されれば,Xは帰責性もないのに耐え難い経済的損失を被ることになる。

 以上の事情から,YがXに対してショッピングモールAにおける時計店の営業の禁止を求めることは,信義則に違反し許されない。

雑感

 本件では,「Yシステム」がどのようなノウハウを含んでいるのか,Yが明確な主張立証をしなかったようです。
 そうなると,Yは,とくに有用なノウハウを提供しているわけでもないのにショッピングモールBにおけるXの出店を制限しようとしたことになり,なかなか厳しい結果を招くことになるのは仕方がないのかもしれません。