【著作権】平成30年法改正:(2)

【思想又は感情の享受を目的としない著作物の利用(新30条の4)】
1 新30条の4の条文
2 実務的な影響
※2018年10月現在での記載内容となっています。「現行」との表記は,その時点での現行法を意味します。

思想又は感情の享受を目的としない著作物の利用(新30条の4)

 改正法は,思想又は感情の享受を目的としない著作物の利用の場合の規定として,新30条の4を設けています。これは,通常は権利者の利益を害さないと評価できる行為類型であるとして,柔軟性の高い規定とされています。

 今回は,新30条の4について説明します。

新30条の4の条文

 新30条の4は,思想又は感情の享受を目的としない著作物の利用の場合の規定であり,通常は権利者の利益を害さないと評価できる行為類型であるとして,柔軟性の高い規定とされています。

 新30条の4の本文柱書は,次のとおりです。

「著作物は,
 次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には,
 その必要と認められる限度において,
 いずれの方法によるかを問わず
 利用することができる。」

 そして「次に掲げる場合」として,

「著作物の録音,録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合」(現行30条の4に相当)を1号に,

「情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から,当該情報を構成する言語,音,影像その他の要素に係る情報を抽出し,比較,分類その他の解析を行うことをいう。)の用に供する場合」(現行47条の7に相当)を2号にそれぞれ規定し,

さらに「前二号に掲げる場合のほか」として,3号に「著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用に供する場合」との規定を新たに設けています。

  新30条の4 1号   現行30条の4
        2号   現行47条の7
        3号   新規定

 この各号は,柱書における「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」がどのような場合であるのか,分かりやすく示して予測可能性を確保するための例示であると,文化庁は説明しています(「概要説明資料」)。

 なお,新30条の4においても,現行の権利制限規定に置かれている「ただし,著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。」との但し書きが,同様に置かれています。

実務的な影響

 現行47条の7は,情報解析のための記録又は翻案について権利制限を定めています。
 そしてその「情報解析」を,「多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。」と定義しています。
 そのため,AIのディープラーニングがこの「情報解析」にあたるのか,という議論がありました。

 新30条の4の2号では,この「統計的な解析」というのを単に「解析」としました。そのため,ディープラーニングも2号の「情報解析」にあたるという形で,この点の議論は終わるのではないかと思います。

 また現行47条の7は,「記録又は翻案」についてのみ権利制限を定めています。
 この点,新30条の4では,「いずれの方法によるかを問わず,利用することができる」と定めています。したがって,学習用のデータセットの公衆送信も,「必要と認められる限度において」,原則として著作権者の許諾なく可能になるものと考えられます。

 この新30条の4で,現行30条の4と47条の7とが包括的にカバーされることになり,現行47条の7は削除されます。

 *次回は,「電子計算機における著作物の利用に付随する利用の場合」の規定(新47条の4)について説明したいと思います。

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