【著作権】その他の著作物(著作権法の基本をおさらい-03-)

 今回はその他の著作物の類型についておさらいします。→自分のための勉強ノートを残します。
(事件名は「著作権法入門」(島並・上野・横山,有斐閣)を参考にさせていただきました。)


目次
その他の著作物
1 編集著作物(法第12条第1項)
 (1) 素材
 (2) 選択又は配列による創作性
 (3) 編集著作物と素材との権利関係
2 データベースの著作物(法第12条の2第1項)
3 二次的著作物(法第2条第1項第11号)
4 権利の目的とならない著作物(第13条)

その他の著作物

 例示されていない著作物の類型を「その他の著作物」として整理する。「その他の」と言っても,けっして重要でないという意味ではない。
 ここでは以下の著作物を取り上げる。
・ 編集著作物(法第12条第1項)
・ データベースの著作物(法第12条の2第1項)
・ 二次的著作物(法第2条第1項第11号)
・ 権利の目的とならない著作物(第13条)

編集著作物(法第12条第1項)

 素材の選択又は配列によつて創作性を有する編集物(データベースに該当するものを除く。)は,編集著作物として保護される(法第12条第1項)。
 つまり,「素材」と「選択又は配列による創作性」が要件となる。

「素材」

 何を「素材」と捉えて創作性の有無を判断すべきかは,その編集物の性質,内容によって定まることになる。

「素材の選択又は配列に創作性の認められる編集物が著作物として保護されるのは,素材の選択又は配列に著作者の個性が何らかの形で現れていれば,当該編集物としての思想又は感情の創作的表現が認められるためであると解されるところ,具体的な編集物に記載,表現されているものの内,その選択,配列の創作性が問題とされる素材が何であるか,どのような意味での選択,配列の創作性が問題となるかは,当該編集物の性質,内容によって定まるものである。」
「本件知恵蔵は,今日の社会において用いられている用語の意味内容を分野毎に解説することを目的とした年度版用語辞典であって,その性質,目的からみて,数多ある用語の中から選択された用語とその解説が収集され,これを,経済,政治等の大分類の中の貿易,日本経済,財政,あるいは国会,内閣・行政,地方自治,外交,防衛等の一定の分野毎に,かつ,各分野の中では『新語話題語』及び『用語』欄に分け,『用語』欄は更に中分類して配列されるとともに,これを補足,説明する『F情報』や図表・写真,これらの用語の背景となった社会の傾向の解説記事(『ニュートレンド』)が選択配列されている点に,本件知恵蔵の編集著作物としての創作性が存在すると認められる。してみると,本件知恵蔵の創作的選択及び創作的配列の対象となった素材は,あくまで,右『新語話題語』及び『用語』欄に記載された用語とその解説,『F情報』の記述,図表・写真及び『ニュートレンド』の記述であると解するのが相当である。」(知恵蔵事件・東京地判平10・5・29)

「選択又は配列による創作性」

 著作物として保護されるのは素材の選択又は配列による具体的な表現であり,その元になった編集方針や編集方法ではない。

「編集物もまた,『著作物』の一種にほかならず,そこでは,著作物性の根拠となる創作性の所在が素材の選択又は配列に求められているというだけで,前述した『著作物』の意義に鑑みれば,たとい素材の選択又は配列に関する『思想又は感情』あるいはその表現手法ないしアイデアに創作性があったとしても,それが『思想又は感情』あるいは表現手法ないしアイデア(発想)の範囲にとどまる限りは,著作権法の保護を受けるものではなく,素材の選択又は配列が現実のものとして具体的に表現されて,はじめて,表現された限りにおいて,著作権法の保護の対象となるものと解すべきである。逆に,編集著作物にあっては,その素材の選択又は配列に関する発想において創作性を有しなくても,これに基づく現実の具体的な素材の選択又は配列に何らかの創作性が認められるなら,その限りにおいて著作権法の保護を受け得ることになるのである。(アサバン職業別電話帳事件・東京高判平12・11・30)

 その編集物の作成がいかに困難であり資料としての価値が高かったとしても,素材の選択又は配列による創作性がなければ著作物として保護されない。

「小説の映画化に関する事項に監視,題名,封切年,製作会社名,監督名,脚本作成者名,主な出演者名を,また,小説のテレビドラマ化に関する事項に関し,題名,放送年月日,番組名,放送局名,制作会社名,監督名 脚本作成者名,主な出演者名,視聴率を,それぞれ項目として選択し,その順序に従って配列して 右の該当事実を整理・編集することは,従来の事実情報資料においても採られていたものであって 原告リストがこの点において何らかの独自性,新規性を有するとは認めることができず,また,題名,監督名 脚本作成者名,主な出演者名等の各事項における個々の事実情報の選択・配列の点においても,原告リストが著作物として保護せべき創作性を有するものとは認められない。」
「なお原告は 原告リストについて,その作成の困難性や資料としての価値の高さを強調するが,著作権法により編集物著作物として保護されるのは,編集物に具現された素材の選択・配列における創作性であり,素材それ自体の価値や素材の収集の労力は,著作権法によって保護されるものではないから,仮に原告が事実情報の収集に相当の労を費やし,その保有する情報に高い価値を認めるとしても,そのことをもって原告リストの著作物性を認めることはできない。」(松本清張作品映像化リスト事件・東京地判平11・2・25)
「言語辞典のような編集物の編集活動は,主として,それ自体特定人の著作権の客体となりえない,社会の文化資産としての言語,発音,語意,文例,語法などの言語的素材を当該辞典の利用目的に即して収集,選択し,これを一定の形に配列し,所要の説明を付加することなどから成り立つものであるが,例えば見出し語に対する文例が多数ありうるものであつて,選択の幅が広いというように,当該素材の性質上,編集者の編集基準に基づく独自の選択を受け容れうるものであり,その選択によつて編集物に創作性を認めることができる場合と例えば見出し語に対する文例選択の幅が狭く,当該編集者と同一の立場にある他の編集者を置き換えてみても,おおむね同様の選択に到達するであろうと考えられ,したがつてその選択によつて編集物に創作性を認めることができない場合がある。」
「そして,後者の場合,先行する辞典の選択を参照して後行の辞典を編集しても,それは共通の素材を,それを処理する慣用的方法によつて取り扱つたにすぎないから,特に問題とするに足りないが,前者の場合において,後行の辞典が先行する辞典の選択した素材をそのまま又は一部修正して採用し,その数量,範囲ないし頻度が社会観念上許容することができない程度に達するときは,その素材の選択に払われた先行する辞典の創造的な精神活動を単純に模倣することによつてその編集著作権を侵害するものというべきである。」(アメリカ語要語集事件・東京高判昭60・11・14)

 要求される創作性は,一般の著作物の場合と同様に,人間の何らかの精神活動の成果が現れていればよいとされる。

「編集著作物における独創性とは,学問的な完全無欠さを要求するものではなく,素材の選択又は配列に,何らかの形で人間の精神的活動の成果が顕れていることをもって足りると解すべきところ,前記のとおり,「用字苑(改訂版)」は,現代生活における実用的な用語辞(字)典という性格上,有益な指針に基づいてレイアウト及び収録語句の選定が行なわれ,結果的にも右目的をほぼ充足する内容となったと認められるから,右の独創性の存在を肯認するのが相当である。」
「なお,作品,ことに辞典類の作成は,何らかの形で先人の文化的遺産を基礎とし,その上に作者の新知見,アイデアを加えて完成させるのが一般であるから,著作物足り得るために,その全部が作者の独創性で貫かれていることまでも要求すべきではなく,成立した作品の具体的な表現の形式ないし方法に独自性が存することをもって足りると解されるから,収録語句の抽出母体が既刊の辞典類であったとしても,そのことは「用字苑(改訂版)」の著作物性を否定する根拠となるものではない。」(用字苑事件・名古屋地判昭62・3・18)

編集著作物と素材との権利関係

 編集著作物の保護は,素材の著作物の権利に影響を及ぼさない(法第12条第2項)。

「編集著作物は,素材の選択又は配列に創作性を有することを理由に,著作物として著作権法上の保護の対象とされるものであるから,編集者の思想・目的も素材の選択・配列に表れた限りにおいて保護されるものというべきである。したがって,編集著作物を構成する素材たる個別の著作物が利用されたにとどまる場合には,いまだ素材の選択・配列に表れた編集者の思想・目的が害されたとはいえないから,編集著作物の著作者が著作者人格権に基づいて当該利用行為を差し止めることはできない。」(京城三坂小学校記念文集事件・知財高判平17・11・21)

データベースの著作物(法第12条の2第1項)

 「データベース」とは,「論文,数値,図形その他の情報の集合物であって,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」をいう(法第2条第1項第10号の3)。
 情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するデータベースは,「データベースの著作物」として保護される(法第12条の2第1項)。

「タウンページデータベースの職業分類体系は,検索の利便性の観点から,個々の職業を分類し,これらを階層的に積み重ねることによって,全職業を網羅するように構成されたものであり,原告独自の工夫が施されたものであって,これに類するものが存するとは認められないから,そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページデータベースは,全体として,体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるということができる。」
「以上のとおり,タウンページデータベースは,職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類した点において,データベースの著作物と認められるというべきである。」(タウンページ・データベース事件・東京地判平12・3・17)
「原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等に対する販売を目的とするものであり,同データベースを用いて,新築分譲マンションの平均坪単価,平均専有面積,価格別販売状況等を集計したり,検索画面に一定の検索条件を入力して,価格帯別需給情報等の情報を,表やグラフのような帳票形式で出力したりすることができるものである。そして,原告データベースは,別紙図1のとおりの構造を含むと認められるところ,そのテーブルの項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方について敷衍して述べると,PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしているものということができる。」
「客観的にみて,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等が必要とする情報をコンピュータによって効率的に検索できるようにするために作成された,上記認定のとおりの膨大な規模の情報分類体系というべきであって,このような規模の情報分類体系を,情報の選択及び体系的構成としてありふれているということは到底できない。」
「したがって,原告データベースが含む構造(別紙図1)は,その情報の選択及び体系的構成の点において,著作権法12条の2にいうデータベースの著作物としての著作物性を認めるに足りる創作性を有するものと,認めることができる。」(コアネット・データベース事件・東京地判平14・2・21)
「本件データベースは,型式指定-類別区分番号の古い自動車から順に,自動車のデータ項目を別紙「データ項目の分類及びその属性等」のとおりの順序で並べたものであって,それ以上に何らの分類もされていないこと,他の業者の車両データベースにおいても,型式指定-類別区分番号の古い順に並べた構成を採用していることが認められるから,本件データベースの体系的な構成に創作性があるとは認められない。」「以上によると,本件データベースは,データベースの著作物として創作性を有するとは認められない。」(自動車データベース事件・東京地判平13・5・25)

 データベース著作物の保護は,データベースの部分を構成する著作物の権利に影響を及ぼさない(法第12条の2第2項)。
 データベースの著作物性が否定される場合でも,通常の不法行為が成立する場合がある。

「民法七〇九条にいう不法行為の成立要件としての権利侵害は,必ずしも厳密な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず,法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべきである。そして,人が費用や労力をかけて情報を収集,整理することで,データベースを作成し,そのデータベースを製造販売することで営業活動を行っている場合において,そのデータベースのデータを複製して作成したデータベースを,その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は,公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成する場合があるというべきである。」(自動車データベース事件・東京地判平13・5・25)

二次的著作物(法第2条第1項第11号)

 著作物を翻訳し,編曲し,若しくは変形し,又は脚色し,映画化し,その他「翻案」することにより創作した著作物を「二次的著作物」という(法第2条第1項第11号)。
 「翻案」について,最高裁は,「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」と定義している。

「言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」「そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。」(江差追分事件・最判平13・6・28)

 既存の著作物の表現を再現しただけのものや,表現上実質的同一性を有しているようなものは,新たな創作的表現が付与されたと言えないので,二次的著作物にあたらない。

「絵画における模写とは,一般に,原画に依拠し,原画における創作的表現を再現する行為,又は,再現したものを意味するものをいうから,模写作品が単に原画に付与された創作的表現を再現しただけのものであって,新たな創作的表現が付与されたものと認められない場合には,原画の複製物として著作物性がないものといわざるを得ない。」「模写制作者が自らの手により原画を模写した場合においても,原画に依拠し,その創作的表現を再現したにすぎない場合には,具体的な表現において多少の修正,増減,変更等が加えられたとしても,模写作品が原画と表現上の実質的同一性を有している以上は,当該模写作品は原画の複製物というべきである。」「著作権法は,著作者による思想又は感情の創作的表現を保護することを目的としているから,模写作品において,なお原画における創作的表現のみが再現されているにすぎない場合には,原画とは別個の著作物としてこれを著作権法上保護すべき理由はないのであって,模写行為の制作過程において発揮された模写制作者自身の自主的な個性,好み,洞察力,技量が制作者の『精神的創作』行為と評価されるものであるとしても,その結果としての模写作品に新たな創作的表現が付与されたと認めることができなければ,著作物性を有するということはできない。」(江戸風俗画模写事件・知財高判平18・11・29)

 二次的著作物の著作権は,新たに付与された創作的部分についてのみ生じる。

「二次的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ,原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし,二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは,原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって,二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は,何ら新たな創作的要素を含むものではなく,別個の著作物として保護すべき理由がないからである。」(ポパイ・ネクタイ事件・最判平9・7・17)

権利の目的とならない著作物(第13条)

 以下のものは,著作権の目的とならない。

・ 憲法その他の法令
・ 国若しくは地方公共団体の機関,独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示,訓令,通達その他これらに類するもの
・ 裁判所の判決,決定,命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
・ 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で,国若しくは地方公共団体の機関,独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの