【著作権】著作者(著作権法の基本をおさらい-04-)

 今回は著作者についておさらいします。→自分のための勉強ノートを残します。
(事件名は「著作権法入門」(島並・上野・横山,有斐閣)を参考にさせていただきました。)
目次
著作者
1 誰が著作者か
 (1) 著作者の認定
 (2) 著作者の推定
 (3) ゴーストライター
2 共同著作
 (1) 二人以上の者が創作した
 (2) 共同して創作した
 (3) 分離して個別的に利用することができない
 (4) 効果
3 職務著作
 (1) 法人等の発意
 (2) 職務上作成
 (3) 自己の著作の名義の下に公表するもの
4 映画の著作物
 (1) 著作者
 (2) 著作権の帰属
 (3) テレビドラマ
 (4) 未完成の映画

著作者

 著作者は,著作者人格権及び著作権を享有する(法第17条第1項)。そしてこの「著作者」とは,著作物を創作する者をいうと規定されている(法第2条第1項第2号)。
 したがって,著作物の創作者が原始的に権利者となる。また著作物の創作者は自然人であるから,この権利者も自然人であるのが原則である。
 しかし,著作権法上,職務著作の場合(法第15条)と,映画の著作物の場合(法16条,29条)の場合とに,例外を設けている。

誰が著作者か

著作者の認定

 著作者とは著作物を創作した者であるから,著作者は誰かの問題は,誰が著作物を創作したかの認定の問題である。
 著作者であるためには表現としての著作物を創作した者でなければならず,アイデアや素材を提供しただけの者は著作者と言えない。

「著作者とは『著作物を創作する者』をいい,現実に当該著作物の創作活動に携わった者が著作者となるのであって,作成に当たり単にアイデアや素材を提供した者,補助的な役割を果たしたにすぎない者など,その関与の程度,態様からして当該著作物につき自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は著作者に当たらない。そして,本件において原告らがその著作物であると主張する原告記事のように,文書として表現された言語の著作物の場合は,実際に文書の作成に創作的に携わり,文書としての表現を創作した者がその著作者であるというべきである。」
「原告個人らが,発言がそのまま文書化されることを予定してインタビューに応じたり,記事の原稿を閲読してその内容,表現に加除訂正を加えたことをうかがわせる証拠はなく,かえって,前記認定の原告記事の作成経過からすれば,原告個人らに対するインタビューは,原告出版社らの企画に沿った原告記事を作成するに際して,素材収集のために行われたにすぎないものと認められる。」「したがって,原告個人らを原告記事の著作者ということはできない。」(SMAP大研究事件・東京地判平10・10・29)

 創作活動の一部作業を受け持ったり準備をしただけの者も著作者とは言えない。

「著作者とは,『著作物を創作する者をいう』のであるから(同項2号),美術品である本件各銅像については,本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。そして本件各銅像のようなブロンズ像は,塑像の作成,石膏取り,鋳造という3つの工程を経て制作されるものであるが,その表現が確定するのは塑像の段階であるから,塑像を制作した者,すなわち,塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者というべきである。」「 本件各銅像の塑像制作について創作的表現を行なった者は一審原告のみであって,一審被告は塑像の制作工程において一審原告の助手として準備をしたり粘土付け等に関与しただけであると認めることができるのであるから,一審原告はいわば反対事実の証明に成功したのであった,同規定にかかわらず,一審被告に対し自らが著作者であることを主張できることになる。」(ジョン万次郎像事件・知財高判平18・2・27)

 著作物の創作という現実の行為が直接立証されなければ,間接事実を積み上げて認定される。

「被控訴人が本件歌詞を作詞したとする昭和六年当時の諸事情,作詞の動機に関する供述の具体性及び同4に認定した被控訴人が『チユーリツプ』及び『コヒノボリ』等の作詞者であるとの新聞記事が公表された時期以降の本件歌詞,特に『チユーリツプ』及び『コヒノボリ』の作詞者としての一貫した行動を総合勘案すると,前記2①の事実,すなわち,本件歌詞の作詞者は被控訴人であるとの事実を優に推認することが可能というべきである。」(コヒノボリ事件・東京高判平5・3・16)

著作者の推定

 著作物の原作品に氏名を表示して公表することによって,その者が著作者として推定される(法第14条)。

第14条 著作物の原作品に,又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に,その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号,筆名,略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は,その著作物の著作者と推定する。

ゴーストライター

 誰が著作者であるかは,現実の創作者は誰かによって決定され,契約によって左右することはできない。つまり,ゴーストライターによる著作物の著作者はゴーストライターだということであり,その氏名表示権(法第19条)はゴーストライターに帰属する。
 名義人の氏名表示によって著作者の推定がされるが(法第14条),ゴーストライターはこれを覆すことが可能である。ゴーストライターが創作した著作物を他人名義で公表する旨の契約は,公序良俗に反し無効とされるおそれがある。

「著作者人格権としての氏名表示権(著作権法19条)については,著作者が他人名義で表示することを許容する規定が設けられていないのみならず,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名を表示をすることが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。したがって,仮に一審被告と一審原告との間に本件各銅像につき一審被告名義で公表することについて本件合意が認められたとしても,そのような合意は,公の秩序を定めた前記各規定(強行規定)の趣旨に反し無効というべきである。」(ジョン万次郎事件・知財高判平18・2・27)

共同著作

 二人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものを,「共同著作」という(法第2条第1項第12号)。
 共同著作物と認定されると,権利が共有になるほか,最終に死亡した著作者の死後から保護期間が起算され有利となる。

二人以上の者が創作した

 二人以上の「創作的」関与が必要である。単に企画案や構想を提示したというだけでは創作的関与は認められない。

「右の事実関係は,光太郎自ら『智惠子抄』の詩等の選択,配列を確定したものであり,同人がその編集をしたことを裏付けるものであって,澤田が光太郎の著作の一部を集めたとしても,それは,編集著作の観点からすると,企画案ないし構想の域にとどまるにすぎないというべきである。原審が適法に確定したその余の事実関係をもってしても,澤田が『智惠子抄』を編集したものということはできず,『智惠子抄』を編集したのは光太郎であるといわざるを得ない。したがって,その編集著作権は光太郎に帰属したものであり,被上告人が,光太郎から順次相続により右編集著作権を取得したものというべき」(智恵子抄事件・最判平5・3・30)

共同して創作した

 その著作物が「共同して創作」されることが必要である。小説を原稿にして作成されたマンガは共同著作ではなく二次著作物である。

「本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを四〇〇字詰め原稿用紙三〇枚から五〇枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができるから,被上告人は,本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。」(キャンディ・キャンディ事件・最判平13・10・25)

分離して個別的に利用することができない

 ある歌の歌詞と楽曲とは分離して個別に利用できるので,共同著作物にならない。「結合著作物」と称呼される。

効果

著作者人格権
 著作者全員の合意によらなければ,行使することができない(法第64条第1項)。
著作権
 他の共有者の同意を得なければ,その持分を譲渡することができない(法第65条第1項)。
 共有者全員の合意によらなければ、行使することができない(法第65条第2項)。ただし差止請求及び損害賠償請求は単独でできる(法第117条)。

職務著作

 現実に著作物を創作した者でない法人が,その著作物の著作者となる場合である(法第15条)。著作権及び著作者人格権が法人に原始的に帰属する。
法人その他使用者(法人等)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で,その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は,その作成の時における契約,勤務規則その他に別段の定めがない限り,その法人等とする(法第15条第1項)。
法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は,その作成の時における契約,勤務規則その他に別段の定めがない限り,その法人等とする(同条第2項)。

法人等の発意

 著作物作成の意思が直接又は間接に使用者の判断にかかっていること。
 法人の具体的な指示がない場合でも,職務遂行上作成が予定されていればこの要件を満たすとされる。
「法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があるとすることに異論はないところであるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,『法人等の発意』の要件を満たすものと解すべきである。(北見工業大学事件・知財高判平22・8・4)

法人等の業務に従事する者

 法人等と雇用関係にある者だけでなく,法人等の役員も含まれる。
 法人等から著作物の作成を請け負った外部者は含まれない。 
「法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが,雇用関係の存否が争われた場合には,同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは,法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,①法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,②法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して,判断すべきものと解するのが相当である。(RGBアドベンチャー事件・最判平15・4・11)

職務上作成

「被告は,科学ジャーナリストと共に知的財産権法の入門書として『知的財産権入門-制度概要から訴訟まで』と題する書籍(本件書籍)を法学書院から出版することを,同社との間で合意し,原告ら本件特許事務所の職員の間で,本件書籍の執筆者を募集した。これに対し,原告を含めた本件特許事務所の弁理士7名及び弁護士1名が応募してきたため,被告は,平成15年5月ころ,原告を含むこれらの者に対して,本件書籍を分担して執筆することを依頼した。」「個々の著作物が著作権法15条1項にいう『職務上作成する著作物』に該当するかどうかは,法人等の業務の内容,著作物を作成する者が従事する業務の種類・内容,著作物作成行為の行われた時間・場所,著作物作成についての法人等による指揮監督の有無・内容,著作物の種類・内容,著作物の公表態様等の事情を総合勘案して判断するのが相当である。」「本件書籍の出版は本件特許事務所の本来的な業務内容に含まれるものではなく,また,本件書籍のための原稿執筆は本件特許事務所において原告が日常担当する業務に直接含まれるものでもない。そして,本件原稿の執筆の行われた状況やその際における被告の関与態様,本件書籍の体裁,公表態様等に照らしても,本件原稿が,著作権法15条1項にいう『職務上作成する著作物』に該当するとは,到底認められない。」(知的財産権入門事件・東京地判平16・11・12)

自己の著作の名義の下に公表するもの

 公表が予定されていない内部文書であっても一定の場合この要件をみたすとされる。
「同条の『その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの』には,公表は予定されていないが,仮に公表されるとすれば法人等の名義で公表されるものも含まれると解するのが,少なくともコンピユーター・プログラムやその作成過程におけるワーキング・ペーパーに関するかぎりワーキング・ペーパーの後述の性格上やはり相当といわなければならない。(新潟鉄工事件・東京高判昭60・12・4)

映画の著作物

著作者

 映画の著作物の著作者は,〔その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者を除き,〕制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とされる(法第16条)。
 映画の著作物には多数の者が関与するため,著作者を明確にする趣旨である。
 クラシカルオーサー(その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者)は映画の著作者(モダンオーサー)に含まれない。
 モダンオーサーは著作物の全体的形成に創作的に寄与した者であり,肩書ではなく現実に行われた行為を客観的に見て判断される。通常は,映画監督,映画プロデューサー,テレビディレクター等である。
「原告は,著名な漫画作家であり,昭和二九年以降,現在に至るまで,『男おいどん』『銀河鉄道999』などの漫画,アニメーションほか数多くの漫画,アニメ作品を著作,発表している。」「被告は,音楽,舞台・ショー製作,アニメ作品のプロデューサーであり,アニメ作品『山ねずみロッキーチャック』『ワンサくん』などをプロデュースした。」
「被告は,本件著作物1について,本件企画書の作成から,映画の完成に至るまでの全製作過程に関与し,具体的かつ詳細な指示をして,最終決定をしているのであって,本件著作物の全体的形成に創作的に寄与したといえる。」
「原告は,本件著作物1の製作について,設定デザイン,美術,キャラクターデザインの一部の作成に関与したけれども,原告の関与は,被告の製作意図を忠実に反映したものであって,本件著作物の製作過程を統轄し,細部に亘って製作スタッフに対し指示や指導をしたというものではないから,原告は,本件著作物1の全体的形成に創作的に寄与したということはできない。」
「確かに,アニメ映画においては,映像が作品の重要な特徴として認識される面があることは否定できず,原告が,美術・設定デザインを担当し,『宇宙戦艦ヤマト』や主要な登場人物のデザインを作成したために,本件著作物1の映像や画面構成に原告の個性が発揮されているのは当然てあるといえるが,そのことのゆえに,映画の著作物である本件著作物1を原告が著作したとはいえない。」(宇宙戦艦ヤマト著作者事件・東京地判平14・3・25)

著作権の帰属

 劇場用映画の著作権は,著作者ではなく映画製作者に帰属する(法第29条第1項)。
 (ただし著作者人格権は著作者に帰属する。)
映画の著作物の著作権は,その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは,当該映画製作者に帰属する(法第29条第1項)。

 映画製作者とは,「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいう(法第2条第1項第10号)。
「『映画製作者』の定義である『映画の著作物の製作に発意と責任を有する者』(著作権法2条1項10号)とは,その文言と著作権法29条の上記の立法趣旨からみて,映画の著作物を製作する意思を有し,同著作物の製作に関する法律上の権利・義務が帰属する主体であって,そのことの反映として同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者のことである,と解すべきである。」(マクロス映画事件・東京高判平15・9・25)
「法2条1項10号は,映画製作者について,『映画の製作について発意と責任を有する者』と規定している。すなわち,映画製作者とは,自己の危険と責任において映画を製作する者を指すというべきである。映画の製作は,企画,資金調達,制作,スタッフ及びキャスト等の雇い入れ,スケジュール管理,プロモーションや宣伝活動,並びに配給等の複合的な活動から構成され,映画を製作しようとする者は,映画製作のために様々な契約を締結する必要が生じ,その契約により,多様な法律上の権利を取得し,又,法律上の義務を負担する。したがって,自己の危険と責任において製作する主体を判断するためには,これらの活動を実施する際に締結された契約により生じた,法律上の権利,義務の主体が誰であるかを基準として判断すべきことになる。」(角川映画事件・東京地判平15・4・23)

テレビドラマ

 劇場用映画でないテレビドラマのような著作物については,次の規定が設けられている。
 専ら放送事業者が放送のための技術的手段として製作する映画の著作物の著作権のうち「次に掲げる権利」は,映画製作者としての当該放送事業者に帰属する(法第29条第2項)。
 専ら有線放送事業者が有線放送のための技術的手段として製作する映画の著作物の著作権のうち「次に掲げる権利」は、映画製作者としての当該有線放送事業者に帰属する(同条第3項)。

 「専ら」放送事業者であること,つまりテレビ局が単独で製作する場合が適用の要件である。
 「専ら」放送のための技術的手段としてであること,つまりDVD販売を予定しているような場合は適用されない。
 この規定によってテレビ局に帰属するのは,放送権と複製権のみである。複製物の頒布権は放送事業者に対するものに限られる。したがってDVDを一般に販売する権利は,監督等の著作者に帰属する。

未完成の映画

 映画製作が完成する前の映像についても法第29条の適用があるか。第一審は適用ありとしたが,控訴審でこれを覆したものがある。
「少なくとも,本件において,本件契約の変更により控訴人が参加約束をした『歴史・文化編』については,映像を撮影収録した本件フィルムがNGフィルム選別,シナリオに従った粗編集,細編集,音づけ等の映画製作過程を経ないまま未編集の状態で現在に及んでいることは前記1(四)に認定したとおりであるから,結局本件フィルムに関する限り著作物と認めるに足りる映画は未だ存在しないものというべきである。そして,本件フィルムが撮影収録した映像の内容は別紙未編集フィルム・内容一覧表のとおりであることは当事者間に争いのないところであるが,それは単なる風景の描写とは異なるものと認められ,かつ前記のようなテーマを持った映画『歴史・文化編』に使用されることを意図したものであることを勘案すれば,本件フィルムに撮影収録された映像は,それ自体で創作性,したがって著作物性を備えたものというべきである。そうであれば,本件フィルムに撮影収録された映像著作物の著作権は,監督としてその撮影に関わった著作者である控訴人にいぜん帰属するものといわなければならない。(三沢市勢映画事件・東京高判平5・9・9)