【著作権】著作者人格権(著作権法の基本をおさらい-05-)

 今回は著作者人格権についておさらいします。→自分のための勉強ノートを残します。
(事件名は「著作権法入門」(島並・上野・横山,有斐閣)を参考にさせていただきました。)
目次
著作者人格権
1 公表権(法第18条)
 (1) 「まだ公表されていない」
 (2) 同意の推定規定
2 氏名表示権(法第19条)
 (1) 著作者名として表示
 (2) 表示の省略
3 同一性保持権(法第20条)
4 みなし著作者人格権侵害(法第113条第7項)
5 著作者が存しなくなった後の保護(法第60条)

著作者人格権

 著作者人格権は著作者に一身専属し,譲渡することができない(法第59条)。
 著作者人格権の内容は次の3つの権利である。
・ 公表権(法第18条)
・ 氏名表示権(法第19条)
・ 同一性保持権(法第20条)

公表権(法第18条)

 公表権とは,まだ公表(*)されていない自己の著作物(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し,又は提示する権利である。

「まだ公表されていない」

 著作物は,発行(*)され,又は上演権,演奏権,上映権,公衆送信権,口述権,展示権を有する者若しくはその許諾を得た者によつて上演,演奏,上映,公衆送信,口述若しくは展示の方法で公衆(*)に提示された場合に,「公表」されたものとされる(法第4条第1項)。
 著作物は,その性質に応じ公衆(*)の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が,複製権を有する者又はその許諾を得た者によつて作成され,頒布された場合において,「発行」されたものとされる(法第3条第1項)。
 「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれる(法第2条第5項)。
 中学の卒業生と教諭という特定の者300名が「公衆」とされた裁判例がある。
「本件詩は言語の著作物であるから,これが発行された場合に公表されたといえるところ,右の『発行』とは,その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され,頒布されたことをいい,さらに,『公衆』には,特定かつ多数の者が含まれるとされている。」「これを本件についてみるに,証拠によれば,本件詩は,平成三年度の甲府市立北中学校の『学年文集』に掲載されたこと,この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計300部以上配布されたことが認められる。」「右認定の事実によれば,本件詩は,300名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから,公表されたものと認められる。また,本件詩の著作者である原告は,本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから,これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。」「したがって,公表権侵害を根拠とする原告の請求は,理由がない。」(中田英寿事件・東京地判平12・2・29)

同意の推定規定

 法第18条第2項には,公表することの同意が推定される場合の規定が置かれている。
① 著作権を譲渡した場合
② 美術の著作物又は写真の著作物の原作品を譲渡した場合
③ 第29条の規定により映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合

氏名表示権(法第19条)

 氏名表示権とは,著作物の原作品に,又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し,その実名若しくは変名を著作者名として表示すること,又は著作者名を表示しないことを決定できる著作者の権利である(法第19条第1項)。
 二次的著作物の公衆への提供又は提示に際する原著作物の著作者名の表示についても,原著作物の著作権者が氏名表示権を有する(同条項)。

著作者名として表示

著作者の氏名は,「著作者名として表示」されなければならない。
「河出書房新社は,本件小説の単行本の初校正ゲラ刷りの段階では,奥付に著者である『D』と原著作者である『A(原案)』を二段に併記していたが,Fからの申入れにより,現実に出版された単行本の奥付には『著者  D』とだけ表記して『A(原案)』の部分を削除し,原告の氏名は,奥付の前頁の映画の『スタッフ』の所に『脚本・監督  A』と表記されたのみであったと認められる。」「右の現実に出版された単行本の奥付の記載では,原告の氏名は,映画のスタッフとして表記されたのみであって,本件小説の原著作者として表記されたとは認められない。これに対し,河出書房新社が作成した本件小説の単行本の初校正ゲラ刷りの段階では,原告の氏名が,本件小説の原著作者として表記されていたものと認められる。」「そうすると,Fは,河出書房新社に対して申入れをして,本件小説の原著作者としての原告の氏名の表記を削除させたということができるから,この行為は,本件小説に関する原告の氏名表示権を侵害する行為であるということができる。」(「ちぎれ雲」事件・東京地判平12・4・25)

表示の省略

 著作者名の表示は,著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは,公正な慣行に反しない限り,省略することができる(同条第3項)。
「本件写真は,『セキスイツーユーホーム』の宣伝誌である『ツーユー評判記』に掲載するために,すなわち『セキスイツーユーホーム』の宣伝広告に用いる目的で撮影されたものであるところ,本件使用も,まさに『セキスイツーユーホーム』の広告である新聞広告に用いたものである。そして,原告本人尋問の結果によれば,一般に,広告に写真を用いる際には,撮影者の氏名は表示しないのが通例であり,原告も従来,この通例に従ってきたが,これによって特段損害が生じたとか,不快感を覚えたといったことはなかったことが認められる。」「上記の事情に照らせば,本件使用は,その目的態様に照らし,原告が創作者であることを主張する利益を害することはなく,公正な慣行にも合致するものといえるから,同項によって原告の氏名表示を省略する場合に該当するというべきである。」(セキスイツーユーホーム事件・大阪地判平17・1・17)
「右認定のような雑誌ブランカの予定読者,発行部数,一号毎,一頁毎の写真の使用枚数,その写真の著作者,提供者か多数であること,中頁に使用される写真は,主として記事の臨場感持たせ,読者の興味を惹くためのものではあるが,本件掲載写真の中には撮影対象について説明が付けられて,単に記事を引き立てるだけでなく,記事とは独立して写真自体により観光地の景観等を読者に紹介しているものもあり,また,世界の観光地の風景,施設観光対象という撮影対象の性質上,写真の美的印象,構図,カメラアングル,露光時間,シャッタ-チャンス等に著作者の力量が表れ,写真自体が読者の関心を惹くことも充分考えられることを考え合わせれば,右のような中頁に使用される写真についても著作者である原告が創作者であることを主張し,他人の著作物と区別することを求める利益は充分に是認することができ,他方,たとえ,全ての個々の写真にその脇に著作者名を表示することか不適切な場合かあったとしても,頁毎,あるいは記事のまとまり毎に写真を特定して著作者を表示することまても不適切とする 情は認められないから,中頁に使用された本件掲載写真について,著作権法一九条三所定の著作者名の表示を省略できる場合に該当するものとは認められない。」(ブランカ事件・東京地判平5・1・25)

同一性保持権

 著作者は,その著作物及び題号の同一性を保持する権利を有する(法第20条1項)。したがって,著作者は,その意に反して著作物及び題号の変更,切除その他の改変を受けない(同条項)。
「ところで,著作権法二〇条一項は著作者はその著作物及び題号について同一性を保持する権利を有するとして,いわゆる同一性保持権を規定しているものであるが,同項にいうところの,著作物及び題号についてのその意に反する『変更,切除その他の改変』とは,著作者の意に反して,著作物の外面的表現形式に増減変更を加えられないことを意味するものと解するのが相当であるところ,かかる見地からみると,被控訴人の前記各行為が本件論文の外面的表現形式に増減変更を加えたものであることは,明らかというべきである。」(法政大学懸賞論文事件・東京高判平3・12・19)

 同一性保持権には,以下の場合について適用除外規定が設けられている(同条2項)。
① 教科書等に使用するための用字又は用語の変更その他の改変で,学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの(同項1号)
② 建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変(同項2号)
「著作権法二〇条二項二号は,建築物については,鑑賞の目的というよりも,むしろこれを住居,宿泊場所,営業所,学舎,官公署等として現実に使用することを目的として製作されるものであることから,その所有者の経済的利用権と著作者の権利を調整する観点から,著作物自体の社会的性質に由来する制約として,一定の範囲で著作者の権利を制限し,改変を許容することとしたものである。これに照らせば,同号の予定しているのは,経済的・実用的観点から必要な範囲の増改築であって,個人的な嗜好に基づく恣意的な改変や必要な範囲を超えた改変が,同号の規定により許容されるものではないというべきである。」
「これを本件についてみると,上記のとおり,本件工事は,法科大学院開設という公共目的のために,予定学生数等から算出した必要な敷地面積の新校舎を大学敷地内という限られたスペースのなかに建設するためのものであり,しかも,できる限り製作者たるイサム・ノグチ及び谷口の意図を保存するため,法科大学院開設予定時期が間近に迫るなか,保存ワーキンググループの意見を採り入れるなどして最終案を決定したものであって,その内容は,ノグチ・ルームを含む本件建物と庭園をいったん解体した上で移設するものではあるが,可能な限り現状に近いい形で復元するものである。これらの点に照らせば,本件工事は,著作権法二〇条二項二号にいう建築物の増改築等に該当するものであるから,イサム・ノグチの著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものではない」(ノグチ・ルーム事件・東京地決平15・6・11)

③ プログラム著作物のバージョンアップ等のための改変(同項3号)
④ ①~③の他,著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変(同項4号)
「一般に,映画監督は,撮影する映画の視聴者に与える影響等を考慮して,スタンダードサイズとするか,ビスタサイズとするか,シネマスコープサイズとするかを考慮した上で選択しているものであり,そのサイズの改変は,当該映画の映画監督が事前又は事後に了解を与えていた場合や,同意を得ないでの改変も正当化されるような特段の事情が認められない限り,著作権法二○条一項に規定する『意に反』する『改変』に該当し,監督の著作者人格権を侵害するものである」「監督の了解については,その具体的なトリミングの方法についての了解を得るか,同意がなくても改変できるような特段の事情の存在が必要と解される。」「本件では,具体的なトリミングの方法についても,控訴人が了解を与えていたことを的確に認めることができる証拠はない。」
「しかし,前記認定のとおり,控訴人は,本件映画がビデオ化されること,ビデオ化される際には,トリミングが行われることについて了解を与えていたこと,ビスタサイズの映画がビデオ化される際には,スタンダードサイズにトリミングされることが当時では通常であったこと,Aが,本件映画の製作総指揮として,本件映画の編集,ダビング,特殊撮影や,合成部分の仕上げ等の業務を行い,このようなAの編集等の参与について控訴人が特段の異議も述べていなかった事情を総合すると,本件改変行為当時としては,Aが,監督としての控訴人の了解を得ないでトリミングをしても差し支えないと判断し,その行為に出たとしても,本件改変行為当時としては,その行為は,妥当なものでなかったということはできず,著作権法二○条二項四号の『著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変』に該当するものと認めるのが相当である。」(スウィートホーム事件・東京高判平10・7・19)
「同法四三条(※現行47条の6)の適用により,他人の著作物を翻訳,編曲,変形,翻案して利用することが認められる場合は,他人の著作物を改変して利用することは当然の前提とされているのであるから,著作者人格権の関係でも違法性のないものとすることが前提とされているものと解するのが相当であり,このような場合は,同法二〇条二項四号所定のやむを得ないと認められる改変として同一性保持権を侵害することにはならないものと解するのが相当である。」(血液型と性格事件・東京地判平10・10・30)
「これらの事実に照らせば,カット37において原カット(ハ)の配置を変更したのは,被控訴人書籍のレイアウトの都合を不当に重視して原カット(ハ)における控訴人の表現を不当に軽視したものというほかはなく,被控訴人ら主張に係る著作物の性質,引用の目的及び態様を前提としても,カット37の右改変を,著作権法二〇条二項四号の『やむを得ない改変』に当たるということはできない。」(脱ゴーマニズム宣言事件・東京高判平12・4・25)
「しかし,上記校正の内容についてみると,本件原稿について改変されている部分は,いずれも,分担執筆に係る複数の原稿により構成されるという本件書籍の性質上,法律名の略称や仮名遣いを統一した点や,法律解説書という観点から本件原稿において不正確ないし不適切な表現を手直ししたものであって,その校正内容は,本件書籍の性質に照らせば不相当なものとはいえない。改変内容が,上記のようなものであることに加えて,被告において,本件書籍の出版を間近に控えて短時間のうちに校正を行う必要に迫られていたという事情のあることをも併せて考慮すれば,上記改変は,やむをえない改変(著作権法20条2項4号)にとどまるものというべきである。」(「知的財産権入門」事件・東京地判平16・11・12)
「本件記事において,リード文は本文の導入としての役割を担っており,両者が一体となって,原告の思想又は感情を創作的に表現した一つの著作物となっているものと認められる。しかるところ,被告は,本件転載の際,これを分断し,リード文を切除して,本文のみを被告ホームページに掲載したものであるが,このような切除は,原告の意に反するものであるから,原告が本件記事について有する同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するものと認められる。」「この点,被告は,上記切除について,著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変である(著作権法20条2項4号)などと主張するが,リード文を切除することがやむを得なかった事情について,何ら具体的に主張するところがない。また,被告は,前記2(2)のとおり,『当クリニックの患者さん(ニックネーム:子パンダさん)の手記が“ちょっと役立つ!子パンダ.COM”として,『がん治療最前線』に掲載中です。今回は○○年○月号分をお届けします。』という紹介文に続けて本件転載を行っており,本件記事のうちリード文の部分を切除し,その一部(本文)のみを転載したものであることが分かるような態様で本件転載を行ったものではないこと等の事情を考慮すると,上記切除が『やむを得ないと認められる改変』又はそれに準じるものということはできないから,被告の上記主張を採用することはできない。」(がん闘病マニュアル事件・東京地判平22・5・28)

同一性保持権を侵害することとなるメモリーカードの販売等が同一性保持権の侵害を惹起した不法行為にあたるとされた判例がある。
「本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし,本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。」
「専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた上告人は,他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。」(ときめきメモリアル事件・最判平13・2・13)

みなし著作者人格権侵害

 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は,著作者人格権を侵害する行為とみなされる(法第113条7項)。
「著作権法一一三条五項の規定が,著作者の名誉又は声望を害ずる方法によりその著作物を利用する行為を著作権人格権の侵害とみなすと定めているのは,著作者の民法上の名誉権の保護とは別に,その著作物の利用行為という側面から,著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨に出たものであることに照らせば,同項所定の著作者人格権侵害の成否は,他人の著作物の利用態様に着目して,当該著作物利用行為が,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。」「したがって,他人の言語の著作物の一部を引用して利用した場合において,殊更に前後の文脈を無視して断片的な引用のつぎはぎを行うことにより,引用された著作物の趣旨をゆがめ,その内容を誤解させるような態様でこれを利用したときは,同一性保持権の侵害の成否の点はさておき,これに接した一般読者の普辿の注意と読み方を基準として,そのような利用態様のゆえに,引用された著作物の著作者の名誉又は声望が害されるおそれがあると認められる限り,同項所定の著作者人格権の侵害となることはあり得る」(「運鈍根の男」事件・東京高判平14・11・27)
「上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである。」「そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。」(陛下プロジェクト事件・東京地判平25・7・16)

著作者が存しなくなった後の保護

 著作者人格権は一身に専属するが(法第59条),著作者が存しなくなった後(自然人の死後,法人の解散後)においても,著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないと規定されている(法第60条)。
 これに基づく法的措置は,死亡した著作者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹が請求できる(法第116条)。
「前記のとおりであるから,本件各手紙が掲載された本件書籍を出版した被告らの行為は,本件各手紙に係る原告らの複製権を侵害する行為に該当し,また,『○が生存しているとしたならばその公表権の侵害となるべき行為』(著作権法六〇条)に該当する。(三島由紀夫書簡事件・東京地判平11・10・18)